金峰町の棒踊り - 田布施大田阿多棒踊りの構造棒踊りの成立まとめ鹿児島の民俗 - 薩摩民俗HOME

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(2) 大田校区の棒踊り系芸能

  大田校区では、中津野に棒踊り系芸能が伝承されている。その 他、郷土史によれば、浦之名河前(こまえ)に、川辺町神殿(かわなべちょうこうどの)から伝わった 虚無僧踊りがあった〔郷土史下巻368頁〕。

中津野南方神社地図 中津野の棒踊りは、毎年4月最終日曜日に、金峰町中津野の南方神社へ奉納される。踊りは4種類が伝承されている。保存会役員によれば、かつては普通作の田植え上がりの踊りとして、半夏生(はんげしょう)のころに行われ、「ハゼオドイ(半夏生踊り)」と呼ばれていたという。戦後、早期米が中心になり、その田植えが落ち着き、皆が集まりやすい4月最終日曜日に開催するようになった。金山踊りは大野から伝わったとも言われている。何度かの中断があり、現在のものは平成16年に復活した踊り。

 練習はかつては茶摘みの時期と重なり、集まるのも大変で、茶摘み作業の合間をぬって、先輩の厳しい指導のもと行っていたという。

〔2014年の中津野お田植え踊り〕

 午前11時に踊り子が道行きの歌に合わせて境内に到着。朱色の襷をほどいて、それぞれの採り物(棒・鎌・ナギナタ・刀・ジャリン)とともに拝殿にお供え。神官によるお祓いを受ける。神事の間に、集落の人々が境内で昼食。

 祭典、昼食が終わると正午から境内の、下の段と上の段で、それぞれ「金山踊り」「鎌踊り(2種類)」「棒踊り」の順に踊る。踊りが終わると、道行の歌に合わせ集落に繰り出し、集落内12か所で披露して回った。以下、各踊りについて報告する。

ホコ 削りかけやシベ飾りはついていないが、踊り子の先頭に付き、「ホコ」と呼ぶ。280センチのマダケ製で、上部に文字を書いた杉板を付けている。表「奉納 御田植踊」裏面「中津野集落」。シベ竿状のものは、もともと無かったという。

4人がらみシベ錫杖踊り「金山踊り」(中津野)4人がらみシベ錫杖踊り(金山踊り) 「金山踊り」と呼ばれる。二才衆(青年)の踊り。この年は小学生の踊り子16人。2列縦隊で4人1組で踊る。棒踊りの棒突きの要領で歌に合わせジャリンを振り、その後金山踊りを踊る。

 採り物は、右手にジャリン、左手にカンナ(刀)を持つ。ジャリンは短い錫杖に色紙のシベ飾りを付けたもので、振るとチャリンチャリンと鳴る。長さ36センチ。カンナは杉板に金の色紙を巻き付けた模造刀。長さ95センチ。服装は全員同じで、白絣の着物に紺の短パン、朱色柄の手甲、黒脚絆、白足袋、ワラジ、白鉢巻き姿。朱色の襷がけ。

4人がらみ鎌踊り 中津野では「2人組カマオドリ」と呼ばれる二才組の踊り。元は中津野西地区の踊り子が踊った(現在は中津野全区)。大野と異なり、@の金山踊りとは別の踊り子が、踊る。鎌と長刀の踊り。2列縦隊で、4人1組になって踊る。この年の踊り子は4人×2組=8人であった。

 採り物は右列が鎌、左手にナギナタを、右手に持つ。左手には採り物はない。鎌は長さ47センチ。ナギナタは長さ110センチ。服装は全員同じで、白絣の着物に紺の短パン、朱色柄の手甲、黒脚絆、白足袋、ワラジ、白鉢巻き姿。朱色の襷がけ。

6人がらみ薙刀踊り 中津野では「3人組カマオドリ」と呼ばれる壮年層の踊り。元は中津野東地区の踊り子が踊った(現在は中津野全区)。尾下下組の三才踊りと同じで鎌とナギナタの踊り。3列縦隊で、6人1組。今年の踊り子は6人×2組=12人であった。

 採り物は、左右列は右手にナギナタ、中央列は右手に鎌をもつ。全員左手には採り物を持たない。長さはナギナタ110センチ、鎌47センチ。服装は、紺絣(現在は白絣も入る)の着物に白の短パン、黒脚絆、白足袋、ワラジ、白鉢巻。朱色の襷がけ姿。

6人がらみ棒踊り(中津野)写真6人がらみ棒踊り 中津野では単に「棒踊り」と呼ばれる壮年層の踊り。3列縦隊で、6人1組(6人がらみ)。この年は6人×2組=12人(踊り子には4人がらみ鎌踊りとの掛け持ちあり)。

 採り物は全員、カタギで作った六尺棒を右手に1本持つ(左手は採り物なし)。歌に合わせて勇壮に掛け合わせる。棒は長さ134センチ。服装は、白衣又は白絣に、朱色柄の手甲、黒脚絆、白足袋、ワラジ、朱色の襷がけ、白鉢巻姿。

歌詞 この年に神社の奉納された4人がらみ鎌踊りと、6人がらみ棒踊りでは、棒突き・踊りとも次の同じ歌詞で踊られていた。

○「清めの雨は、パラリと振り通る」

6人がらみ薙刀踊り(中津野)写真 6人がらみ薙刀踊りでは、次の歌詞で棒突きし、踊りがある。

○「とっしゃごの花は、揉めば手に染む」

 その他、保存会の皆さんによれば、次の歌詞がある。

○「おせろが山に、前は大川」
○「山太郎蟹は、川の瀬に棲む」
○「今こそ通る、神にモノメイ(物詣り)」

 金山踊りでは、ジャリン振り(ジャリンを上下させて鳴らす)で、「清めの雨は、パラリと振り通る」、シベ錫杖踊り(金山踊り)は大野と同じ歌詞で2番(今度大坂…)が聞かれた。


*写真:中津野お田植え踊り

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