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例会研究発表要旨

2022年度鹿児島民具学会例会

■南薩摩の十五夜行事から見た川内大綱引

井上賢一

 薩摩川内の大綱引きの綱練り(綱作り)と綱引の構造を、南薩摩の十五夜行事と比較検討してみたい。「薩摩川内の大綱引き調査報告書」掲載の県内現況分布図をみると、本土では薩摩側で伝承地率が高く、大隅側では低い。綱練り継続地も、南薩で39集落から、北薩で27集落から報告があがっている。

 綱練りには、庭広げ式・道伸べ式・櫓かけ式の3種類がある。川内の例は2つ目の道伸べ式にあたり、あらかじめ準備した長い荒縄を道に伸ばして綯う。固定した立山と縒りを入れるに従いずれ動く寄山と呼ばれる櫓の間に荒縄をかけ、綱を3本綯う。さらにシンコと呼ばれる綱綯い具を使い、1本の大綱に綯いあげる。

 道伸べ式の南薩の例では、南さつま市坊津町泊の綱練りが今でも見られ、シンコの役割を、集落民3人が担い、綯い合わせていく。同じく南さつま市の笠沙町ではヤマウッドと呼ばれるシンコに似た民具もあった。

 川内大綱引きでは、太鼓隊や押し隊の役割も特徴である。南薩の例では、坊津町で見られる触れ太鼓や気勢付けの一斗缶叩き、坊津町鳥越のどんとせ習俗(押し競まんじゅう)などの例がある。

 さらに川内大綱引きでワサを掛けるダンギについては、加世田万世の綱曳きずりでカーブを回る際の添え木をダンギと呼んだり、坊津町草野で引きずり切られないよう括りつける木杭をダンギと呼んだ例がある。川内大綱引きで勝負を決する綱の切断は、南薩の綱切りと再利用習俗に通じるものがあるのではないだろうか。

 川内大綱引きは、鹿児島に広く伝わる十五夜綱引き習俗を受け継ぎ、年中行事から競技へ展開した、洗練された習俗と言える。

2022年11月例会 - 2022.11.13 鹿児島県歴史・美術センター黎明館

井上賢一「南薩摩の十五夜行事から見た川内大綱引

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