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例会研究発表要旨

2012年度鹿児島民具学会例会

■奄美の請島・与路島の民具と民俗

下野敏見

 奄美大島の南端の港町、古仁屋から小船で一時間余にある請島・与路島には注目すべき民具がある。

 例えば、食生活を見ると、蘇鉄の実のナリでこしらえた餅状のナリ澱粉。おかゆに入れて使える。ナリ味噌やナリの豚味噌もある。独特のおいしい味だ。奄美諸島ではこれらは各地で見られるが、請島では今も作る人が多い。

 与路島のアブィリャの森山にあって、ノロの風葬墓であったムヤ(喪屋・もや)は、およそ7メートル四方位の四角い地で、四方ともサンゴ石の土手で囲まれている。一般墓地は浜辺近くにあるが、ノロは丘の上の森山に丁重に葬り、風葬にしたのである。今もその遺構が残っていて、貴重な文化財といえよう。

 与路島には自然石積みの石垣が多い。昔のノロの神道(かみみち)も残されている。石垣の高さ210センチ、道幅80センチである。

 請島にも与路島にも昔は、ヤドリと称する山小屋があって、人びとは季節的にそこに行き、一家族中住んだ。そして開墾地の畑を耕し、主にサトウキビを栽培し、砂糖を製造した。ヤドリの跡は各地にある。

 旧暦八月の新節(あらせつ)の日や柴差しの日には、ワラ人形のウシュッグヮ(遠い爺さん)やガガ(馬の形の人形)を作り、縁において飯も供えて拝む。注目すべき人形達であり、行事である。

2012年5月例会 - 2012.5.12 鹿児島市中央公民館

下野敏見「奄美の請島・与路島の民具と民俗」

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