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例会研究発表要旨

2011年度鹿児島民具学会例会

■南九州の船霊様

下野敏見

 大隅半島の佐多辺塚の船霊(ふなだま)は、帆柱下の筒状の柱に、小祠ふうに作ってあった。その不用になったものを見せてもらったが、中に五穀とサイコロ、銭を入れてあった。注目されるのはサイコロであるが、船霊様はサイコロが好きだという。これは、遠い昔、羅針盤のない頃、サイコロで神占いして進路等を決めた名残りであろう。

 奄美大島の八月踊りに「ヤイキュラサ、サンクルメ」などの囃子が入る歌があるが、このサンクルメは、サイコロからきていると最初に指摘されたのは、奄美市に住む林 蘇喜男氏であった。中世、琉球王府の高官按司(あじ)が乗って奄美にやってきた船はサイコロで神意を伺って航海したのだろう。

 南さつま市笠沙町小浦で見た船霊は、やはり帆柱下におくものであったが、中に五穀や銭のほかに、小型の紙雛を二体入れてあった。一体は麻紐を紙で巻き、もう一体は七歳の女の子の髪の毛を巻いてあった。麻紐は男の子を表すという。つまり、幼い男女神を祭るわけであるが、実際の女の子の髪は注目すべきである。これは、女の子の霊力で船を守る意味であり、琉球文化のウナリガミ信仰に連なり、古代大和の弟橘姫(おとたちばなのひめ)の神話に連なり、古い信仰の流れを表す民具だといえよう。

2011年5月例会 - 2011.5.14 鹿児島市中央公民館

下野敏見「南九州の船霊様」

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