組子との出会い
組子職人としてのキャリアをスタートさせるきっかけとなったのが専門学校時代に出会った有村義光先生。
修行時代を京都で過ごし、建具の全国展で受賞歴のある腕のいい先生でした。
「教科書どおりじゃ飯は食えん!!」「生きた技術を学ばんと意味はないぞ!!」
在学時に、2年間みっちり家具や建具の作り方や現場の生きた技術を学び、校の代表として出品した
全国技能展では厚生労働大臣賞を頂きました。卒業が迫ったある日、先生が言いました。
「お前に組子を教えてやる!やりたいか?」「・・・はい!」それが組子との出会いでした。
その細かさと精密さから一目見て「これは自分にはできそうにないな」と思いました。
卒業後に大切な時間を割いてわざわざ奄美大島まで来てくれて、2週間泊り込みで組子の基本である
‘菱に麻の葉’の作り方を実際に作品をつくりながら丁寧に教えてくれました。
仕事の後は毎晩一緒にお酒を飲んで仕事の話や修行時代の話を聞かせてくれました。
「お前は奄美一ではなく、鹿児島一でもなく、日本一を目指してがんばれ!!」
専門学校を卒業したばかりで組子の作り方さえ知らない自分に言ってくれた言葉でした。
先生が帰ってから、仕事が終わった後のわずかな時間を利用して何とか麻の葉を作れるようになりました。
しかし、住宅の洋風化であまり和風建具の需要もなくなり組子を製作することもありませんでした。
ただひたすらフラッシュ仕様の建具と棚を作る仕事ばかりして、組子の技術は麻の葉で止まったままでした。
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