交通・交易・通信・運搬具 - 鹿児島民具学会笠沙町中央公民館収蔵民具調査「笠沙の民具図録」 | 鹿児島の民俗 - 薩摩民俗HOME

陸の交通・交易・通信・運搬具

笠沙の陸上運搬具・交通通信概説

1 人力運搬具

イネサシ○頭上運搬:片浦では女性による頭上運搬が行われていたという。カブシというクッションの上に物を載せる。
○背負い運搬:カレナワという背負縄を使う運搬や,背負梯子(カレコ)を用いるものがある。またチャツミテゴ(背負籠)もこの運搬法の一種。
○肩担い運搬:天秤棒に水桶などを提げて肩に担ぐ運搬法。棒にはワラなどを突き刺すオコ類(鉾の訛り),天秤棒のサシ類(差し渡すという意味),サシに縄をたらしてかぎをつけたイネカギ(担い鉤)がある。
○その他:腰下げ運搬…ウオテゴ(びく)など。手持ち運搬…ブイゾケ(ざる)も運搬具としても用いる。滑車…ボロッコと呼ばれた。

2 蓄力運搬具

○牛による運搬:野間半島では牛の運搬が盛んであった。馬を飼う家は少なかった。牛の鞍には乗馬鞍,荷鞍,曳き鞍の三種類がある。
○荷車:今のリヤカーに似た形で,木製の箱に車輪をつけたもの。

3 交通・通信の発展

○交通:明治33年県道片浦街道開通,明治40年大崎―小浦に客馬車登場,明治42年村内自転車1号,大正10年大崎―小浦に乗合自動車(バス)。
○通信:明治25年小浦郵便局開局(現笠沙局),明治35年小浦局電報取扱開始,昭和3年小浦局電話取扱開始。

陸上運搬具個別民具解説

イネサシ・メシテゴ(天秤棒・吊り下げ籠)

かごを下げたぼうを,かたに かついで はこぶ

肩担い人力運搬具の一種。籠(メシテゴ・メゴ・フゴ)を天秤棒(イネサシ・サシ)につりさげ,その棒を肩に担いで物を運ぶ。イネサシは担いサシ。サシは差し渡すという言葉から来ているとされている。写真のイネサシは杉材で,本来は吊り下げるひもが引っかかりやすくするため木の栓があったが,釘で代用している。メシテゴ(メゴ)は直径47cmのマダケ製で,底は四角になっている。

天秤棒・吊り下げ籠

イネサシ長さ12.3cm,
メシテゴ直径47cm


イネカッ(担い鈎)

おけなどをつり下げて はこぶ ぼう

肩担い人力運搬具の一種。両側のカギに水桶,肥桶などを掛けて,運ぶ棒。写真上のものは本来両側とも木のカギがあったと思われる。右側は鉄製。写真下のものは両方とも鉄製のカギがつけられている。いずれの担い棒もシュロ縄にカギをつけている。肩担い運搬具の棒にはこのほかオコ(ヤマオコ)があるが,こちらは鉾(ほこ)から転訛したものといわれ,稲ワラなどを突き刺して使う棒のこと。

担いカギ

@長さ124,A長さ110.4cm


フゴ(吊り下げ籠)

ぼうにつり下げて,ものをはこぶ かご

肩担い人力運搬具の一種。サシ(天秤棒)の両側に吊り下げてさまざまなものを運ぶかご。写真のふごは竹製で,シュロ縄でサシに吊り下げられている。口は丸く,底は四角。『笠沙町の民具』によれば,フゴが使われだしたのは昭和20年ごろからで,それまではカガイ(背負い袋)がよく使われていたという。

吊り下げ籠

直径42cm,高さ17cm


ブイゾケ(片口笊)

やさいや おいもを はこぶ どうぐ

芋・野菜などを運ぶ手持ち運搬具の一種。籠(かご)と笊の区別ははっきりしない。笊は籠より厚みが少ないもので,一般に水きり用が多い。ブイゾケのソケ(ショーケ)は,笊籬(そうり)の転訛とされる。写真のブイゾケは竹を笊編みに編んでいる。柄の部分は杉材。

片口ざる

幅42cm,長さ40cm,厚さ12cm


ジョウバグラ(乗馬鞍)

うまの せなかに かぶせて 人がのる どうぐ

鞍には乗馬鞍(乗鞍)・荷鞍・農耕鞍(弾き鞍)の三種類があり,写真は人が乗るための乗馬鞍。本来は右側に,写真側のたらす部分があるが,収蔵品では欠けている。牛皮でできている。『笠沙町の民具』によれば,運搬交通に用いるのは雄馬が多く,30〜40年ほど前(昭和60年調査)から馬がいなくなり,使わなくなったという。

乗馬鞍

長さ43cm,幅60cm


ウイノクラ(荷鞍)

にもつを牛や馬にのせるときに使う どうぐ

荷物を牛馬にくくりつけるときに使う鞍。鞍には乗鞍・荷鞍・弾き鞍の3種がある。荷鞍は前後二つの湾曲状の枠木を左右二本の棒でつないだもの。『笠沙町の民具』によれば,この下にイッサキの木の繊維で作ったダンブクロを付けたという。ウセグラともいう。

荷鞍

幅70cm,高さ43cm,奥行き40cm


ウイノクラ(荷鞍)

牛や馬に にもつを のせるときに使う どうぐ

荷物を載せるときに使う鞍。写真の荷鞍は前の枠が後ろの木枠より大きい(前83cm,後ろ69cm)。また右側の横木がなくなったまま展示されている。一般には荷鞍は馬に用いる場合が主流。『笠沙町の民具』によれば,これは牛に使ったのでウイノクラと呼ばれたものという。肥料,薪,芋,麦,米などさまざまなものを運んだ。

荷鞍

幅83cm,高さ37cm,奥行き38cm


テグイマ(荷車)

にもつを はこぶ くるま

肥料,薪,米など様々なものを運ぶ二輪車の荷車。写真の荷車には,箱型の荷台が付いている(杉板製)。車輪は堅木製で,外側に鉄輪をまいて補強している。柄は一部破損しており,接木で補強してある。『笠沙町の民具』によれば,テグイマは大正から昭和30年代ごろまでよく使われ,4,5件に一台ぐらいはあったという。

荷車

荷台長さ140cm,高さ40,幅69,
車輪85cm


ハグイマ(荷車の車輪)

ものをはこぶ に車のしゃりん

荷車には一輪車と二輪車があり,これは大八車(だいはちぐるま)やリヤカーなどと同じ二輪車の車輪部分。一輪車は押して使い,この二輪車は引いて使う。写真の車輪は堅木製で輪の外側に鉄をまいて補強している。自転車のスポークにあたる輻(や)は14本あり,これも堅木製。

荷車の車輪

直径85cm,車輪の厚さ3.5cm

交通・通信の個別民具解説

電信用和文タイプライター

でんぽうを書くためのタイプライター

郵便局で電報を扱っていた時代に使ったタイプライター。電報が郵便局に届くと,このタイプライターで打ち出して,配達した。昭和37年10月中島精密工業製。キーは47あり,そのうち5つはいわゆる機能キー(シフトキー)で,後進・余白・上段(2つ)・上段トメ。下に細長いスペースキーが付いている。左から右へ印字されるので,紙を横にして入れる。笠沙町内の電報業務は,明治35年の小浦郵便局が最初。

電信用和文タイプライター

幅37cm,高さ25cm,奥行き37cm

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