とりつくし法の未来(1) home
はじめに アルキメデスの着想は円を考えてそれに正多角形を内接させ、次々と正多角形の辺の数を増していくというものであった。
多角形の周は円周よりわずかに小さいが、辺の数をどんどん増やしていくと多角形は円にだんだん近づく。多角形の周を求めて円の直径で割れば、πの近似値が得られ、辺の数を増すことによってこの近似は改良できる。内接多角形は内側から円に近づくから、アルキメデスは外接多角形も使ってその過程を繰り返した。
96辺の内接・外接多角形を使って(正6角形から始めて辺の数を倍、倍としていって)アルキメデスはπの値は 3.14103 と 3.14271 の間にあると計算した。
(不思議な数eの物語)この計算結果は円の面積にもそのまま通用します。すなわち、π/4 の値は 0.78525 と 0.78567 の間にある。したがって、アルキメデスの近似法には「円を多数の小さな三角形の和と考えて円の面積を求める」ことも含まれているといいたいところですが、それはどうか。とりつくし法本来の面積計算のプロセスを経ていないことは明らかです。アルキメデスは、円周に多角形の周を配当するという離れ技を優先して、とりつくし法本来の作業過程を見せることはなかったというべきでしょう。
皮肉なことに、円は1個の大きな3角形であるという思想がいつのまにか大きく成長して今日に至っています。π/4 しかり。π(r)^2 しかり。それでもなお、円の面積は多数の小さな三角形の和と考えている例をひとつ見つけました。
それは関孝和の『求円周率術』にある「周差」のことですが、長さの差とはいえ、その内実は「円周に依拠して環をなす二等辺三角形の群」の面積です。私の考えでは、こういう三角形が円の面積をとりつくそうとする実体になるはずです。もっとも、とりつくし法の計算過程においていったん環を解かれた三角形は再び凝集して1個の図形をなさねばならない。それらの図形は、不肖私が、おくればせながら作図してみます。とにかく(円面積の)とりつくし法は今なお命脈を保っているという事実を明らかにできればと思います。型抜きして拾い集める
とりつくし法 与えられた図形を多数の小さな図形の和と考えることにより図形の面積を求めるという発想は、ギリシャ人に始まった。その発明は紀元前約370年のエウドクソス(Eudoxus)に帰する。(不思議な数eの物語)
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4つの三角形(弐_1〜4)の面積は、正方形と
正8角形の面積の差をなしていますが、同
時に2つの図形の周長の差にも相応してい
ます。
直径1になる円があるとします。
最初に作る内接多角形は正方形で、4角の形から円周の分割を始めますが、私の解釈では、直径を挟んで2個の△が背中合わせになっていて(S壱)、2角と数えます。
つぎに作るのは内接正8角形ですが、正方形(S壱)と重複している部分をくり抜いて、4個の△が連環している形を残します。これら4個の△は集めて1個の菱形にします(S弐)。この〔ステージ弐〕の分角数は4角と数えます。
菱形(S)は形が変化しますが、菱形(W)は同じ形のまま幅が半減していきます。
つぎに内接正16角形を作り、正8角形(弐)と重複する部分をくり抜いて、8個の△が連環している形を残します。これら8個の△も集めて1個の菱形にして(S参)、分角数を8角と数えます。ここが〔ステージ参〕です。
同様のことを〔ステージ四〕以降もずっと続けてその様子を見せたいのですが、絵のサイズからしてここらへんが限界です。多角形の辺は、短くなるにつれて円周にも近接して、鮮明に描き分けることが難しくなりますが、こうして増加ぶんをひとつに集めた菱形にするとボリュームもわかっていいというのは自慢です。これらの菱形をピラミッド状に重ねて展示します。(左図)
壱に始まり終りは無いというものの、すべてのステージの菱形の面積を合せたとしたら、その結果は即ち円の面積にほかならないので、それでもって元の円に還ることができるという理屈です。
しかし、正多角形が円周のすべてをとりつくしたという終局はいつまで待っても訪れない。ただ、究極の菱形はこんな姿をしているという想像はできます。この図でいえば、灰色の線で描いた菱形の姿をしているのではないかと思います。
絵に描いた菱餅 その横幅は、円周(π)を角数で割った長さになる。正多角形の周はもはや円周に等しくなっているのだから、これは当り前です。
わからないのはその縦幅ですが、どうやら横幅のπ/4倍という長さになるようです。右の図のように、菱形の横幅を一にして、壱、弐、参と、それぞれの縦幅をとってみると、だんだん一定の比率に近づいてゆくことがわかる。それがたまたま横幅のπ/4倍になっているということです。角数を無視して考えると、究極の菱形の面積は (1/8)(π)^3 ということになります。したがって、これと同じ面積の円を描くとすれば、その直径は √2・π ということになります。しかし、要素の1個の角にさかのぼって、そのすがたを見てみると、凡人にはまったく不可解なことになっています。
究極の菱形。これは理想というものでしょう。しかし、現実の正方形から離れてすぐに究極の形に酷似してゆく様子を見ると、この現実は理想が支配しているごときありさまです。すべてのステージの菱形(S)が孤独に究極の菱形(W)という理想を夢見ているところを見ると、それぞれのかたち大きさは、理想のかたちから、その角数に応じて、じかに決められるような気がします。その数式は、数多くの△が隙間なく押し込まれている現実の図とは裏腹に、個々のステージの面積(Sn)を、他のステージには無断で、個々に決定してしまうことになりそうです。
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半周(180゚)をとりつくそうとしています。
数式を探るために その式のかたちは単純なものではないようですが、その数式がもたらす結果は、菱形(S)の面積なので、別途算出したそのデータを思う存分に調べることができます。実際、壱から弐拾四ステージまで、菱形(S)の面積を50桁を限りに計算していますので、これ(表1)を徹底的に調べて、ひとつの数式(備考)にまで高めてみたいと思います。
計算の見取り図
最初の2角(S壱)は、直径(1周360゚を180゚に2分する)を基にしています。円周上にある0゚点(直径の右端)と90゚点を直線で結び、2倍の長さにして、直角三角形の斜辺とします。
つぎの4角(S弐)は、0゚点と90゚点にかかる弦を基にしています。0゚点と45゚点(弧の中点)を直線で結び、4倍の長さにして、直角三角形の斜辺とします。面積はこの△の1/2です。
8角(S参)は、0゚点と45゚点にかかる弦を基にしています。0゚点と22.5゚点を直線で結び、8倍の長さにして、直角三角形の斜辺とします。面積はこの△の1/4です。16角(S四)以降も同様のことを続けます。
このように0゚点と角数分された弧の中点を結んで角数倍に伸ばすという操作は数限りなく続けてゆくことができて、斜辺の長さは円の半周(π/2)に限りなく接近してゆきます。また、面積(S)の累計は円の面積(π/4)に限りなく接近してゆきます。この絵を描いたおかげで、扇の縁に沿って π/2 の 能率的な計算ルートがあることがわかりました。扇の底辺(直径)の冪(2乗)を元に、端辺の冪をつぎつぎに加えてゆくだけで、各斜辺(内接多角形の半周)の冪が得られるハイウェイな計算ルートになりそうです。(もっとも〔表1〕は地道な計算ルートの結果です。)
〔あとで追加 2009.1.1.〕
あるいは、扇の縁に沿って π/2 直線分 の 能率的な作図ルートがある。
1弦の2n倍長をコンパスで取ってゆくとすれば、数が多くなるにつれて弦も短小になり、作業の限界が早く訪れますが、この場合は、やみくもに直角を押し通してゆけばよいので、だいぶ長続きします。
また、なにも考えることがないので気分が樂です。しかし、なぜこんなに筋よくことが運ぶのでしょうか。ほんとうに円の半周を直線分に叩き直すことになるのか。心配になったので、図形的に証明しておきたいと思います。これらの延長線が前者の終端からおろした垂線で切られると、その角形の半数ぶんの弦の長さを合せた線分になっている。
たとえば、2番目の斜線は正8角の半分にあたる4つの弦の全長に等しい。正8角の半分で4つの弦がある。その内1弦は線分に含まれている。
その隣の1弦の長さはもちろんこれと相等しい(三角形は二等辺である)。
ところで、
直角三角形は2つの二等辺三角形を合せた三角形であることから、
現に直角三角形の一部分をなしている隣の三角形も二等辺であるほかない。
したがって、
2番目の斜線の半分は、2弦を合せた長さがあり、
2番目の斜線の全体は、4弦を合せた長さがある。
また同様に、
3番目の斜線の4分の1は、2弦を合せた長さがあり、
3番目の斜線の全体は、8弦を合せた長さがある。直径と円周の長さの関係はどのように見られてきたのかと考えると、たいていの見方は、秋田名物 大館曲げわっぱ。真直ぐな直径をまるく曲げて円周に添わせているので、このように円周を真直ぐにしようという見方は珍しいと思います。おまけにこれは、まだ数値化されていない長さです。径と周の長さの比は「測り縄の長さ比べ」にかえて判明させます。
必ず引分けに終わるというルールに従って、延長戦に入ります。
測量がある程度精密におこなわれていれば、これで終われると思います。
「如し」というのは「見分けがつかない」という意味です。感覚的な要素が混じった判定です。
物之数量不可悉全、必以分言之。(九章算術)
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とりつくし法の未来
関孝和は、内接正131072角形の周 3尺1415926532889927759弱
(私の計算では 3尺14159265328899276527)を踏台にして、円周を求めています。彼は、式によって得られた結果として、直径1尺の円周を、
3.14159265359尺(微弱)
としている。最後の微弱というのは、ここにかいた数よりは僅かに少ないという意味である。πの値は、
3.141592653589....... であるから、微弱という言葉まで含めて正しい。
(江戸時代の数学 p.93 )彼は、巨多角形の周長の増加がその直前における増加のほぼ4分の1になっているのを見て、最後の巨多角形の周に無限多角形に至る「周差」の総和を継ぎ足して 円周(π) の値を求めようとしたのですが、「周差」というのは、その角数が対応するステージの菱形(S)の面積を4倍したものにあたります。したがって、孝和の式は、つぎのように円積(π/4)の上限の値を求める式に作り変えることができます。
.沙五塵九埃微弱
`
為定周
゚
角周
`
得三尺一寸四分一厘五毫九絲二忽六微五繊三余為法
゚
実如法而一
`
得数加入六万五千五百三十六千五百三十六角周与一十三万一千零七十二角周差
`十八角周与六万五千五百三十六角周差
`
内減六万五七十二角周差相乗之
`
得数為実
゚
列三万二千七百六周差
`
以六万五千五百三十六角周与一十三万一千零列三万二千七百六十八角周与六万五千五百三十六角 第二
求定周
括要算法四 求円周率術
上限 S拾六・S拾七 下限 4 円積(π/4) < S(壱〜拾六) + ――――――――― 円積(π/4) > S(壱〜拾五) + ―― S拾六 S拾六−S拾七 3 S拾六/S拾七=(4−0.0000000017234597) という比率を無限等比数列における公比のように取り扱います。しかし、この比率はつぎの S拾七/S拾八 をみると (4−0.0000000004308649) に変わっています。したがって、計算結果は円積(π/4)よりやや過大な値になります。(3.141592653589793238600888052942) > 3.141592653589793238462643383279(円周率)
そこで今度は、究極にあらわれるという比率(4−0)を公比のように取り扱います。この計算結果は円積(π/4)よりもやや過小な値になります。(3.141592653589793238428082215878)
もっとも、彼が下限について何らかの検討を加えていれば、あと二,三桁詳しい円周率を記すことができたはずなので、彼が示した式の性質が『微弱』という言葉に反映していると見たのは早計だったかもしれません。
アルキメデスはまたパラボラのもっと理論的な側面も研究した。とくにパラボラの扇形部分の面積の求め方を。彼は扇形部分を、面積が等比数列的に減少する一連の三角形に分割することによってこの問題を解いた。
個々の三角形の面積を足していったとき(等比数列の和の公式を使った)、アルキメデスは全面積が三角形ABCの面積の4/3に近づくことを発見した。
(不思議な数eの物語).
表1
ステージ 角数 面積(S) 前後の比率 弐拾四 16777216 0.000000000000013769552911346648 弐拾参 8388608 0.000000000000055078211645385147 4 - 0.000000000000105191635680298425 弐拾弐 4194304 0.000000000000220312846581517415 4 - 0.000000000000420766542721182724 弐拾壱 2097152 0.000000000000881251386325698859 4 - 0.000000000001683066170884553858 弐拾 1048576 0.000000000003525005545296862619 4 - 0.000000000006732264683535382723 拾九 524288 0.000000000014100022181092525394 4 - 0.000000000026929058734096207506 拾八 262144 0.000000000056400088722851300276 4 - 0.00000000010771623493565965582 拾七 131072 0.000000000225600354867104380278 4 - 0.000000000430864939731035836013 拾六 65536 0.000000000902401419079604387945 4 - 0.000000001723459758738498747768 拾五 32768 0.000000003609605670097407426412 4 - 0.000000006893839031983681451271 拾四 16384 0.000000014438422580853468042847 4 - 0.000000027575356080409709218317 拾参 8192 0.00000005775368873083530752452 4 - 0.000000110301423561238574688486 拾弐 4096 0.000000231014729442085601057604 4 - 0.000000441205682078550308820846 拾壱 2048 0.000000924058510068342279375259 4 - 0.00000176482253365175051785435 拾 1024 0.000003696227517079123263538107 4 - 0.000007059287020008630368453956 九 512 0.000014784805697576951821262703 4 - 0.000028237098246514319849310871 八 256 0.000059137552882052066623822167 4 - 0.000112947595653173764372633346 七 128 0.000236523494504988936225311614 4 - 0.000451777625506698040941367941 六 64 0.000945666602203412125715119973 4 - 0.001806906402419167053697095908 五 32 0.003775834571971744560425037201 4 - 0.007224360917458328325619837372 四 16 0.014994423334333527936219505847 4 - 0.028845266252375778384143857646 参 8 0.058260083543632019056075605955 4 - 0.114549906682252345619452338334 弐 4 0.207106781186547524400844362104 4 - 0.445134153790878963342789259101 壱 2 0.5 4 - 1.58578643762690495119831127579 合計 0.785398163397443719764690396904 エクセル用長桁数演算マクロ エクセルでも長い桁数の計算が可能になりました。
備考
ステージ壱
α=0.9394664..
α 4 (2)^2 π (3)^2 (π)^3 (4)^2 (π)^5 (5)^2 (π)^7 A壱= ――{ ―― − ―――・―― + ―――・――― − ―――・――― + ――――・――― − ・・・・・} 2 π 10 4 100 (4)^3 1000 (4)^5 10000 (4)^7
S壱=W壱−A壱 1 (π)^3 α 4 (r)^2・(1−r) 1 但し 1 (π)^2 S壱= ――・ ――― − ――・ ――・ ――――――――― = ―― r= ――・ ――― 2 (4)^2 2 π (1+r)^3 2 10 (4)^2 ステージ弐

同じく、α=0.9394664..
α 1 (2)^2 π (3)^2 (π)^3 (4)^2 (π)^5 (5)^2 (π)^7 A弐= ――{ ―― − ―――・――― + ―――・――― − ―――・――― + ――――・――― − ・・・・・} 2 π 10 (4)^3 100 (4)^6 1000 (4)^9 10000 (4)^12
S弐=W弐−A弐 1 (π)^3 α 1 (r')^2・(1−r') √(2) 1 但し 1 (π)^2 S弐= ――・ ――― − ――・ ――・ ――――――――― = ――― − ―― r'= ―――――・ ――― 2 (4)^3 2 π (1+r')^3 2 2 10・(4)^2 (4)^2 ............
ステージN 同じく、α=0.9394664.. SN=WN−AN
1 (π)^3 α 1 (r)^2・(1−r) 但し 1 (π)^2 SN= ――・ ――――― − ――・ ――・ ――――――――― r= ―――――・ ――― 2 (4)^n+1 2 π (1+r)^3 10・(4)^n (4)^n
求弧術「今有弧形。只云、弦八寸、矢二寸。則問弧若干」の逆をゆく問題になるが、
「円周を(2)^n等分した弧があるとき、その弦と矢の積はいくらか」という問題に答えられる。参考文献
不思議な数eの物語;E.オマール著 伊理由美訳;岩波書店 1999.
江戸時代の数学; 田崎中著;総合科学出版 1983
関孝和全集;平山諦・下平和夫・広瀬秀雄 編著;大阪教育図書 昭和49年
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