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このページは「帯直弧積術を学ぶ」(4.24.)の続きになる。さきのページでは、専ら田崎中氏の「江戸時代の数学」によって、帯直弧積のアイデアを学ぶに止まり、「弧背術解(安島直円著)」の原文に直接あたることはなかった。その後「安島直円全集」を入手し、手始めに「久留島先生答術之論」を読んでみたものの(「速さを積む」7.1.)、ほかの著作の内容は難しく、気軽に読めるものではない。先日、肝心の「弧背術解」にまだ眼を通していないことをふと思い出して、本を開いてみた。読んで見ただけではわからないところがあったので、勉強のために書き写して見たのがこれである。(横書き、洋数字変換のほかは、できるかぎり忠実に写そうと努めているが、ところどころ原文の体裁を損ねている。なお私のコメントを挿入しているが、なるべく見なかったことにしてほしい。
安島直円(あじま なおのぶ、1732〜1798)の「弧背術」は、(弓形の)弦の長さと(円の)直径から弧背の長さを求める算術であるが、その中で「帯直弧積」の術は触媒の役割を果たしている。帯直弧の面積を求める算式を確立したところで、「弧背術解」の仕事は大きな山場を越したといえるだろう。また、弦=径という条件では、「帯直弧積」はそのまま円積になり、この式は円周率を示す式になっている。私はそこのところにのみ関心があるので、ここまで(全集では、433頁〜438頁3行目)を書き写し、後半( 〜442頁)の遂に弧背の長さが求められるところは筆写を省略した。
初心の方のために、「弧背術解」の数学史上の意義などを説明しておきたいが、私自身初心者で何も知らないので、全集から「解題(432頁)」を書き写しておく。
平山諦・松岡元久 編集 「安島直円全集」 富士短期大学出版部 昭和41年3月10日発行
解題
弧背術解は安島直円の最も輝かしい業績の一つである。弧背の長さを求めるに、従来は弧背を等分したが、安島は弦を等分する方法を採用した。この結果、計算の途中で二度極限の概念を使用しなければならない。円理二次綴術と呼ばれる所以である。
関孝和、建部賢弘以来の円理の研究は行きづまりの状態であったが、円理二次綴術によって新しい研究部門が開かれた。更に円理三次綴術に及んでは、円以外の曲線の研究も可能になった。ここに和算は完全に積分の領域を開拓して、その学術を咲き誇ることになった。
本書において安島は次の結果を得た。
(1)^2・(a)^3
(1)^2・(3)^2・(a)^5
(1)^2・(3)^2・(5)^2・(a)^7
s
=
a
+
――――――
+
――――――――――
+
――――――――――――
+・・・・
2・3・(d)^2
2・3・4・5・(d)^4
2・3・4・5・6・7・(d)^6
但し、 s は弧背、 a は弦、 d は円の直径とする。
これを求める方法はまず本文の図にあるように矩形の両端に円弧を付けたものの面積(仮にAと名づける)を求めた。Aから矩形を取り去れば円弧の面積が得られる。これより弧背の長さが求められる。
Aを求めるには、図に示したように矩形の和として求められる。この各の矩形の面積を無限級数の和の形として出している。この無限級数を再び無限個加え合わせる必要が生じる。ここに、
(1)^p + (2)^p + (3)^p +・・・+(n)^p 1 lim ――――――――――――――――――― = ――――― n→∞ (n)^(p+1) p+1 なる公式が必要になる。この活用が円理二次綴術の中心をなす。安島は次の形も導いた。
2 c 2・4 c 2・4・6 c s = a{1+ ― (―) + ―― (―) ^2 + ――― (―) ^3 +・・} 3 d 3・5 d 3・5・7 d 但し、 a は弦、 c は矢(弧と弦の中点を結ぶ線分)。
436頁、437頁の数字に明らかな誤記があるが、校訂し得なかったことを付記しておく。(→あとがき)
.
弧背術解..
.仮令、截弦為5段、
則其一者子也 (α).
丑者 ||子 (2α)
寅者 |||子 (3α)
卯者 ||||子 (4α)
辰者 |||||子 (5α)注意)
原本では「|」。これはふつう正の値である。負の値を表すときには、斜線「\」をかぶせて負の値であることを示しているが、
このページでは、
「|」赤い算木は正の値を、
「|」黒い算木は負の値を
それぞれ表している。
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仮に弦を等分するようにして(図のように)5つの内接長方形を切り出したとき、「子」が最短の距離である。「丑」は「子」の2個、「寅」は3個、「卯」は4個、「辰」5個ぶんの長さになる。(直径をd、弦を a 、子を α としたとき、 a = 5α、)
径冪内減子冪、余得一長冪。径冪内減丑冪、余得二長冪。
径冪内減寅冪、余得三長冪。径冪内減卯冪、余得四長冪。
径冪内減辰冪、余得五長冪。故。一長冪者 |径巾(d)^2 |子1段巾 (α)^2
二長冪者 |径巾(d)^2 |子2段巾(2α)^2
三長冪者 |径巾(d)^2 |子3段巾(3α)^2
四長冪者 |径巾(d)^2 |子4段巾(4α)^2
五長冪者 |径巾(d)^2 |子5段巾(5α)^2 但し、a =5α。(a は弦。)「冪」は、ある長さを自乗した数で、つまり正方形の面積にもなる。「巾」もやはり「冪」の略字。
径(円直径)が直角三角形の斜辺となっているので、径冪から各段冪を減じると、各長冪が得られる関係になっている。
各長冪平方開之、得各長。各長冪平方開之形、不可得、而傍書故、
各以径為大商、自乗之、内減各長冪、余為朓積、依綴術、各得長、
則依傍書、而見各長之形。つぎに、上のように表された長冪を開平して、元の辺長そのものを求める。
すでに松永良弼が√{(a)^2−x}を無限級数に展開しているので、安島はそれを使っている(江戸時代の数学)。〔10月3日追加〕 「明治前日本数学史」日本学士院編、岩波書店、1956 によって、
それが松永良弼の業績であることを確かめることができたので写してく。(12) 算法綴術草 源東岡編
本書は帰除と開平方に分かちて論じているが、帰除の条では 1/(1−x) の展開式の適用を実問について説き、開平法の条では √(1−x) の二次級数展開と、他の形の級数展開とを示してゐる。後者は特に注目するに足る。(第2巻 p.540)
開平方の条の問題の一は次のごとし。
今有積三萬歩。為方田。問、面幾何。
すなはち
. .
√30000 =. .
√(200)^2−10000. . .
( =√(a)^2−b )を求むるもので、b を腓積(残りの積)と名づけてゐる。これに対する答えは、
. . .
√(a)^2−b. 1 b
=a{1−─(──)
. 2 a^2. 1 b
−──(──)^2
2・4 a^21・3 b
−───(──)^3
2・4・6 a^21・3・5 b
−────(──)^4 ー・・・
2・4・6・8 a^2なる二項級数展開に外ならぬ。但しこの公式を出す経路の説明はないが、それは建部賢弘の圓理弧背術にすでに示されている。(同巻 p.541)
つぎの表にはこの公式が使われている。
綴術
原数 一差 二差 三差 四差 五差 六差 9 7 7 5 5 5 3 3 3 3 朓 朓巾 朓再 朓三 朓四 朓五 大商 大商 大商 大商 大商 大商 大商 ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ 大商巾 大商三 大商五 大商七 大商九 大商十一 2 4 8 16 32 64 2 3 3 3 3 2 4 4 4 2 5 5 2 6 2 注意) 「再(乗)」は、冪(巾)にまた自らを乗じた、つまり (n)^3 したという意味である。したがって、
つぎの「三(乗)」は (n)^4 、今いう4乗のことになる。
引き続き「四乗」は(今いう)5乗、「五乗」は(今いう)6乗、・・・・、というようになっている。括之
原数 一差 二差 三差 四差 五差 六差 3 15 105 945 朓 朓巾 朓再 朓三 朓四 朓五 大商 大商 大商 大商 大商 大商 大商 ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ 大商巾 大商三 大商五 大商七 大商九 大商十一 2 8 48 384 3840 46080 級数の連鎖は七差以降果てしなく続くが、その無限和は必ず一定の値に収束する。
√{(a)^2−x} において、 a に当たるものを「大商」という。また x に当たるものを「朓積」という。
「朓」は、みそかづき、旧暦の晦日に西の空に見える月のこと。
是依綴術所得平方商之形也。求各長者、以径為各大商、以子1段冪
為一長之兆積、以子2段冪為二長之兆積、以子3段冪為三長之兆積、
以子4段冪為四長之兆積、以子5段冪為五長之兆積。依之得各長。上の公式を各長を得る式に変えるには、径を「大商」に代入し、また、各段冪(巾)を「朓積」に代入する。
原数 一差 二差 三差 四差 五差 六差 (一長) 子1段巾 子1段三 子1段五 子1段七 子1段九 子1段十一 径 径 径 径 径 径 径 ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ 径巾 径三 径五 径七 径九 径十一 (二長) 子2段巾 子2段三 子2段五 子2段七 子2段九 子2段十一 径 径 径 径 径 径 径 ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ 径巾 径三 径五 径七 径九 径十一 (三長) 子3段巾 子3段三 子3段五 子3段七 子3段九 子三段十一 径 径 径 径 径 径 径 ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ 径巾 径三 径五 径七 径九 径十一 (四長) 子4段巾 子4段三 子4段五 子4段七 子4段九 子4段十一 径 径 径 径 径 径 径 ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ 径巾 径三 径五 径七 径九 径十一 (五長) 子5段巾 子5段三 子5段五 子5段七 子5段九 子5段十一 径 径 径 径 径 径 径 ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ 径巾 径三 径五 径七 径九 径十一 此 此 此 此 此 此 級 級 級 級 級 級 2分 8分 48分 384分 3840分 46080分 之1 之1 之3 之15 之105 之945
各長相併、則原数之級者、截数因径也。一差之級者、以截数為底子
方垜積因径因子冪以径冪除之形也。二差以上準之。故各長相併者、5つの長をたし合わせて1つの式をつくることができる。その式において、「原数」は、径に截数(5)を掛けたものになる。各差は、{(截数の垜積)×径×子冪}/径冪、という式で表される。
「垜(ダ)」は「あづち」断面が三角形の築土のこと。たとえば、方垜積の場合は、
(1)^2+(2)^2+(3)^2+(4)^2+(5)^2=55、という計算になる。
原数 一差 二差 三差 四差 五差 六差 子巾 子三 子五 子七 子九 子十一 径 方垜積 三乗垜 五乗垜 七乗垜 九乗垜 十一乗垜 截数 径 径 径 径 径 径 ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ 径巾 径三 径五 径七 径九 径十一 此 此 此 此 此 此 級 級 級 級 級 級 2分 8分 48分 384分 3840分 46080分 之1 之1 之3 之15 之105 之945
以子乗之、得積。得積傍書。 子(横の長さ)をかけて面積を得る。
原数 一差 二差 三差 四差 五差 六差 子 子再 子四 子六 子八 子十 子十二 径 方垜積 三乗垜 五乗垜 七乗垜 九乗垜 十一乗垜 截数 径 径 径 径 径 径 ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ 径巾 径3 径5 径7 径9 径11 此 此 此 此 此 此 級 級 級 級 級 級 2分 8分 48分 384分 3840分 46080分 之1 之1 之3 之15 之105 之945
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所得之積形、直積相併之像、而中之直形者、長左右次第短、
而当円之規、若截数至多之極数、則子者至少之極数也。
於是積形為上下弧積而中帯直形之像。n・α=a。 右図のときの截数は5であるが、截数(n)を増してゆくに従って、子(α)はだんだん短かくなり、
ついには帯直弧(左図)の形になる。又得積依垜術変之。
垜積(累乗の和)の値を一般的な式で表しておく。
「自然数の累乗の和の公式は関孝和が作っているから、安島はそれを使って式をかきなおしている。(田崎中)」
(例えば)、(n)^2 + (n−1)^2 +・・・+(1)^2 = {2・(n)^3 + 3・(n)^2 + 1・ n }/6
原数 一差 二差 三差 四差 五差 六差 子 子再 子四 子六 子八 子十○ 子十二 截数 截数再 截数四 截数六 截数八 截数十○ 截数十二 径 径 径 径 径 径 径 ━━ ○
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○
径巾 径三 径五 径七 径九 径十一 子再 子四 子六 子八 子十○ 子十二 截数巾 截数三 截数五 截数七 截数九 截数十一 径 径 径 径 径 径 ![]()
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径巾 径三 径五 径七 径九 径十一 子再 子四 子六 子八 子十○ 子十二 截数 截数再 截数四 截数六 截数八 截数十二 径 径 径 径 径 径 ○
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○
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○
径巾 径三 径五 径七 径九 径十一 1/2 子四 子六 子八 子十○ 子十二 約 截数 截数再 截数四 截数六 截数八 法 径 径 径 径 径 6
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○○
ママ径三 径五 径七 径九 径十一 1/8 子六 子八 子十○ 子十二 約 截数 截数再 截数四 截数六 法 径 径 径 径 30 ○
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○
径五 径七 径九 径十一 3/48 子八 子十○ 子十二 約 截数 截数再 截数四 法 径 径 径 42
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○○
ママ径七 径九 径十一 15/384 子十○ 子十二 約 截数 截再 法 径 径 90 ![]()
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○
径九 径十一 105/3840 約 截数 法 径 66 ![]()
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径十一 945/46080 約 法 2730 .
截数因子弦也。故変之、得変図。 n・α → =a
原数 一差 二差 三差 四差 五差 六差 弦 径 径 径 径 径 径 径 弦再 弦四 弦六 弦八 弦十○ 弦十二 ━━ ○
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○
径巾 径三 径五 径七 径九 径十一 子 子 子 子 子 子 弦巾 弦三 弦五 弦七 弦九 弦十一 径 径 径 径 径 径 ![]()
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径巾 径三 径五 径七 径九 径十一 子巾 子巾 子巾 子巾 子巾 子巾 弦 弦再 弦四 弦六 弦八 弦十○ 径 径 径 径 径 径 ○
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○
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○
径巾 径三 径五 径七 径九 径十一 1/2 子三 子三 子三 子三 子三 約 弦 弦再 弦四 弦六 弦八 法 径 径 径 径 径 6
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○○
ママ径三 径五 径七 径九 径十一 1/8 子五 子五 子五 子五 約 弦 弦再 弦四 弦六 法 径 径 径 径 30 ○
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○
径五 径七 径九 径十一 3/48 子七 子七 子七 約 弦 弦再 弦四 法 径 径 径 42
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○○
ママ径七 径九 径十一 15/384 子九 子九 約 弦 弦再 法 径 径 90 ![]()
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○
径九 径十一 105/3840 子十一 約 弦 法 径 66 ![]()
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径十一 945/46080 約 法 2730 .
截数至多、則子至少矣、至少之極数者空也。故第一行有形、
而第二行以下皆尽、而為空、即帯直弧積之真数也。
截数(n)が極大になると、子(α)は虚無になるので、子(α)が消えずに残る第2行以下の値は零になる。
したがって、第1行のみを残して帯直弧積の真数とする。
原数 一差 二差 三差 四差 五差 六差 弦 弦再 弦四 弦六 弦八 弦十 弦十二 径 径 径 径 径 径 径 ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ 径巾 径三 径五 径七 径九 径十一 1/6 1/40 3/336 15/3456 105/42240 945/599040 (以下は略す)
あとがき
算木数字は、文の中では、位が進むごとに縦横の向きを互い違いにして表現する約束になっている。つまり、奇数の位(一、百、万、)と偶数の位(十、千、)とでは数字の形が違う。
(このページの例により、赤い算木で正の値を示す)
十、千 1 2 3 4 5 6 7 8 9 一、百 ところで、「436頁、437頁の数字に明らかな誤記がある」という(解題)。これは、表の六差の数字を指しているようだ。4番目と6番目の算木数字の表記は、位との関係において、明らかなルール違反といえる。
○○
ママ
○○
ママ六差の算木数字をアラビア数字に直すと、上から(原文では右から)
-210(径), -1365(子), -2730(子巾), +5005(子三), -8580(子五), +9009(子七), -4550(子九), +691(子十一),
という順に並んでいる。4番目を +5005 、6番目を +9009 , と読んで問題がないかどうかを見るには手軽な試金石がある? n=1 のとき、(n)^12 の累乗の和は 1 である。ここは「約法二千七百三十○(2730)」が分母であるから、分子の合計は -2730 でなければならない。集計してみると上の8個の係数の合計は、-2730 となっていて一安心になる。
(直円は)二度目の極限を「垜術」で「割り切って?」始末している。この表の一部分を(田崎氏が)現代の記号式に書き換えられたものを見た筈だが、ややこしい数式から眼が離れてしまい、私は今まで実際を知らなかった。それで、原文の算木数字の列を見たとき、何を表しているのか不思議であった。
安島は(無限級数によって) π をつぎのように表したといわれているが、そこのところが「弧背術解」の原文ではどのようになっているが、しっかり確認して終わりにしよう。
安島直円(あじま なおのぶ、1732〜1798)が示した、π の無限級数による表示を述べてみたいと思います。
安島直円の得た結果は
π 1 1 1 1 1・3 1 1・3・5 1 ― = 1 − ― ・ ― − ―― ・ ― − ――― ・ ― − ―――― ・ ― 4 2 3 2・4 5 2・4・6 7 2・4・6・8 9
1・3・5・・・(2n−3) 1 − ――――――――― ・ ――― − ・・・・ 2・4・6・8・・・(2n) 2n−1 です。 (上野健爾「円周率πをめぐって」日本評論社)
「帯直弧積」の最後の算表において、弦の長さが直径に等しく(弦=径)なる場合、最後の表はつぎのように変えて書き表すことができる。
原数 一差 二差 三差 四差 五差 六差 径巾 径巾 径巾 径巾 径巾 径巾 径巾 ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ (1) 1/6 1/40 3/336 15/3456 105/42240 945/599040 直径を1とすると、これは直径1の円の面積、すなわち π/4 である。
また、いちばん最初の「綴術」の算表にならって、各級の係数要素を個々に示すと、つぎのようになる。
原数 一差 二差 三差 四差 五差 六差 9 7 7 5 5 5 3 3 3 3 径巾(1) 径巾(1) 径巾(1) 径巾(1) 径巾(1) 径巾(1) 径巾(1) ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ 2 4 8 16 32 64 2 3 3 3 3 3 2 4 4 4 5 2 5 5 7 2 6 9 2 11 13 こうしてみると、「安島直円は πの無限級数による表示 を(それとなく)書きしるしている。」というほかない。