帯直弧積術を学ぶ             home

 

 

 「帯直弧」というのは、2個の弓形(弧)が真ん中に長方形を抱えた形のことである。(図左)

 「直」が特に正方形になっている場合(図右)、
「帯直弧」全体の面積、つまり「帯直弧積」を2倍したものから、「直」の1個ぶんの面積を差し引いた結果は、円の面積に等しいということになる。

 お気に入りの『帯直弧積』術。ひととおりの 横*縦 で円の面積を測る、という私期待の円積手法である。今回はその生い立ちに迫ってみたい。
 私の場合は、嘉量斛の「方尺而其外圓」への思い入れが先に立って、三千年の歴史を考えてしまうが、本当のところはどうだろうか? 直円の発想は、和算という閉鎖された境域の内で、独りでに、形成された。と見るのがまずは妥当な線であろう。それでよく注意してみると、

 直圓の『帯直弧積』術は、(円周ではなくて)弧の長さを求める問題の一般的な解法として創意されている。

ようである。普通の人には円と弧の違いはよくわからない。それで、教える方も、その違いを説明する手間を省くのだろうか。私が安島直圓という人を知った最初の本では、

安島直円(あじま なおのぶ、1732〜1798)が示した、π の無限級数による表示を述べてみたいと思います。安島直円の得た結果は

π/4 = 1−(1/2)・(1/3)−{1/(2・4)}・(1/5)−{(1・3)/(2・4・6)}・(1/7)
      −{(1・3・5)/(2・4・6・8)}・(1/9)
      −{(1・3・5・・・〔2n−3〕)/(2・4・6・8・・・〔2n〕)}・(1/〔2n−1〕−・・・・・
です。

         (上野健爾「円周率πをめぐって」日本評論社)

というふうに教えている。ただし、直圓の理論が、些細な区別を要するところから生まれて、やがて融通無碍・天衣無縫の域に達したということを、私は、まだ知らなかったときのことである。直圓は偏に円積・円周を求めたという先入観は自ら好んで招いたものだが、直圓が円周率を述べているこの本を読んだことも一因のようだ。

弧・矢・弦

 弧の長さを求める問題があって『帯直弧積』術が発想された、という筋書きがようやく脳に入ったようである。泥縄で、「弧の長さ」を求める方法の歴史を勉強しなければならないはめになった。

      (九章算術・巻1 方田)

 今有弧田、弦30歩、矢15歩、問為田幾何、
 答曰、1畝97歩半、

 今有弧田弦78歩2分歩之1、矢13歩9分歩之7、
 問為田幾何、答曰、2畝155歩81分之56

 術曰、以弦乗矢、矢又自乗、併之2而1、

方中之圓、圓裏12觚之冪合外方之冪4分之3也、方中合外方半則朱實合外方4分之1也、弧田半圓之冪也、故依半圓之體而為之術以弦乗矢而半之、則為黄冪、矢自乗而半之則為2青冪、青黄相連、為弧體法、當應規今觚面不至外畔、失之于少矣、圓舊術以周3径1為率、倶得十2觚之冪、亦失之于少也、與此相似指?半圓之冪耳、若不満半圓者益復疎闊、
句股鋸圓材之術、以弧弦為鋸道長、以矢為句深、而求其径、既知圓径、則弧可割分也、割之者半弧田之弦以為弧其矢為句、為之求弦、即小弧之弦也、以半小弧之弦為句、半圓径為弦、為之求股、以減半径、其餘即小弦之矢也、割之又割使至極細、但擧弦矢相乗之數、則必近密率矣、然于算數差繁、必有尋究也、若但度田取其大舊術為約耳、

 「弧田」は円の一部分を直に切り取った形をしている。図のように、底辺が「弦」、高さが「矢」、円辺が「弧」といわれる。九章算術にある問題は、「弦」と「矢」の長さを示して「弧田」の面積を問うている。その解法は、「弦(の歩数)と矢(の歩数)を掛け合わせた値と、矢(の歩数)を自乗した値とを、合計した値を2で割る。」となっている。
 この解法について、注(劉徽)はだいたいつぎのように述べていると思う。

 この解法は、半円にのみ妥当であるが、ほかは過少になる。半円で妥当といっても、「周3径1」つまり正12角形(觚)の面積率を基準にしたはなしであるから、すべてにおいて過少な値になる。
 (弧田の正確な面積を求めるには、元の円の直径を明らかにする必要がある。)それには句股鋸圓材之術を活用すればよい。弧田の弦を「鋸道長」、矢を「句深」とみなして、直径を求めることができる。直径が知れると、円を内接多角形(觚)に分割しまた分割したと同様にして、(弦・矢に対する)弧の長さを計算することができ、(ひいては詳しい面積を計算することができる)、というわけである。ただし、弦・矢を掛け合わせた値に詳細な算率をかぶせて面積を計算するといっても、弦・矢の比率次第で算率も変わるわけだから、それを一度に定めることはできない。

 弧田の面積に、弧の長さと半径は、大切なものである。 
 「弧田」の面積はつぎのようにして測る。

   「弧の長さ」に円弧の半径を掛けて2で割る。
   ・・・(1)
   半径から矢を差し引いたものに弦を掛けて2で割る。
   ・・・(2)
   (1)から(2)を引く。

 劉徽が「句股鋸圓材之術を応用すれば、弧田の弦を鋸道長、矢を句深とみなして、直径を求める。」というのは、九章算術・巻9 句弧 の問題にあてはめて、つぎのようなことであろう。


今有圓材、埋在壁中、不知大小、
以鐻、鐻之深1寸、鐻道長1尺、
問径幾何、答曰、材径2尺6寸、

術曰、半鐻道自乗、如深寸而1、
以深寸増之即材径


この術のなりたちは、

 {半鐻道*(半鐻道/深)}+深 

 ={(半鐻道*半鐻道)/深}+深= 直径

ということになろう。 右図でわかるように、

 2つの直角3角形は相似。つまり、
股/句 の比例はまったく同じである。また、
小さな△の股が大きな△の句を兼ねている。

   股*(股/句)=大きな△の股

これに小さな△の句(深)を加えると直径になる。

 「以弦乗矢、矢又自乗、併之2而1」 この術を近似式というのは甘いが、記号式に直すと、

    =^2、(a は弦。 は矢。)

 弦と弧の関係は非常にミステリアスで、近世日本の算学でもひとつの関心事となった。寛永6年に刊行された『竪亥禄』に載っている「弧矢弦の法」は、

 l^2=^2+6^2   S =(1/4)−(1/2){(/2)−

だいぶ洗練された近似式になっているが、その後、弧の正しい値そのものを目指す算法が求められてゆく。 

 さて、以上のように、弧矢弦の法を補正しようとする努力はついに無限級数を生み出した。
 御覧のようにいくつかの係数を計算して、その間になりたつ法則性をさぐり出すという帰納的方法である。建部にしても鎌田にしても、数多くの計算をしながら、試行錯誤を何回か繰り返したことであろう。その流れはさらに続いてゆく。
 安島直円(あじま・なおのぶ、1732〜1789)は、その著『弧背術解』の中で、新しい考え方を展開している。
                             (
田崎中「江戸時代の数学」総合科学出版 1983)

(ここで断っておくが、テキストをすぐに手に入れ難いということもあって、私は『弧背術解』をまだ読んでいない。当ページの記述はすべて「江戸時代の数学」の請売りである。言い訳になるが、この本の著者は直帯弧積について丁寧かつ熱心に解説されているので、この本を精読すれば原文を読みこなしたと同様かもしれない。

帯直弧積

 直圓は、一般に弧の長さを求めている。したがって帯直弧の直は不定の長方形である。その点にこれからは注意しなければならないが、私の学びとしては、つぎのように問題を設定しておく。

  特に正方形を抱えた帯直弧の面積を求める。もとになる弦の長さは直径の √(2)/2 である。

  直圓は、まず右下の図で帯直弧積のコンセプトを呈示している。なお、本図は、田崎中「江戸時代の数学」の図3-30から図3-35までを粗く写したものである。田崎氏の解説では無駄な喩えは用いられていないが、当ページでは〔丸太〕を製材するというイメージを加えて理解する。
 

 5種の〔角材〕の横幅は、弦 AB の1/5、2/5、3/5、4/5、5/5にする。対角線が直径になるので、
     (たて)=√{(直径)^2−(横)^2
つまり(句股之術から)縦幅を求めることができる。
 ここで、〔丸太〕の直径を1尺として、弦 AB の長さを √(2)/2尺ということにしよう。
(田崎氏の解説では、直径を  、弦 AB の長さを  としている。安島のしたことを含め級数展開の筋を理解するには、そうしないといけないが、理解不足の私には危ういので、直径 1尺 という簡単な設定にする。)
 右下の図のように合わせて9枚の〔板〕を割り取るというのは、すべての〔板〕を合わせた面積を知りたいという趣旨であるが、この場合もそれぞれの〔板〕の縦幅は〔角材〕とまったく同じである。

 「素朴板割術」では、板9枚ぶんの面積をつぎのように計算する。

. 

 弦

 句

 (弦)^2

 (句)^2

 (股)^2

  股

  面積

一長

1.000000

0.141421

1.000000

0.020000

0.980000

0.989949

0.140000

二長

1.000000

0.282843

1.000000

0.080000

0.920000

0.959166

0.135647

三長

1.000000

0.424264

1.000000

0.180000

0.820000

0.905539

0.128062

四長

1.000000

0.565685

1.000000

0.320000

0.680000

0.824621

0.116619

五長

1.000000

0.707107

1.000000

0.500000

0.500000

0.707107

0.100000

.

.

.

.

.

.

.

sum

.

.

.

.

.

.

.

0.620328

   板9枚

の面積

0.620328

尺^2

.

.

.

もちろん直圓がいうのはこういう安易なことではない。「(たて)=√{(直径)^2−(横)^2」という式を級数に展開して、各長を求める。「すでに松永良弼が √(^2−) を無限級数に展開している。」ので、直円はこれを借用したわけである。

√(1−)= 1−(1/2)・ −1/(2・4)・(X)^2 −(1・3)/(2・4・6)・(X)^3 −(1・3・5)/(2・4・6・8)・(X)^4
        −・・・・−{1・3・5・・・(2n-3)}/{2・4・6・・・(2n)}・(X)^n

 普通の開平が墨を引いて鋸を入れるの対して、彫刻ではじめは粗くあとは細かに削り取ってゆくようなイメージであろうか。
 ここでは、=(句)^2、ということになる。例によって 直径1尺 という設定で、実際に級数による計算をしてみよう。

.

  係数

.

  - 1/2

  - 1/8

  - 3/48

  - 15/384

  - 105/3840

  - 945/46080

.

.

.

 第1項

  第2項

  第3項 

  第4項

  第5項

  第6項

  第7項

.

.

 句

 原数

 一差

 二差

 三差

 四差

 五差

 六差

.

.

.

(弦)

(句)^2

(句)^4

(句)^6

(句)^8

(句)^10

(句)^12

.

一長

0.141421

1.0

0.020000

0.000400

0.000008

0.00000016

0.0000000032

0.000000000064

.

二長

0.282843

1.0

0.080000

0.006400

0.000512

0.00004096

0.0000032768

0.000000262144

.

三長

0.424264

1.0

0.180000

0.032400

0.005832

0.00104976

0.0001889568

0.000034012224

.

四長

0.565685

1.0

0.320000

0.102400

0.032768

0.01048576

0.0033554432

0.001073741824

.

五長

0.707107

1.0

0.500000

0.250000

0.125000

0.06250000

0.0312500000

0.015625000000

.

.

.

.

 sum

 sum

 sum

 sum

 sum

 sum

.

.

.

.

1.100000

0.391600

0.164120

0.07407664

0.0347976800

0.016733016256

.

.

.

.

*

*

*

*

*

*

.

.

.

 係数

0.500000

0.125000

0.062500

0.03906250

0.0273437500

0.020507812500

.

.

 sum

=

=

=

=

=

=

 sum

.

.

5.0

0.550000

0.048950

0.010258

0.00289362

0.0009514991

0.000343157560

0.613395775372

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

 第1項

 第2〜7項

  残り

.

.

.

.

.

.

.

5.0

0.61339578

4.38660422

板5対合縦幅

.

.

.

.

.

.

.

        *

0.14142136

板1対の厚さ

.

.

.

.

.

.

.

.

=

.

.

.

.

.

.

.

.

.

0.62035952

板9枚の面積

.

.

.

.

 以上は、7項(六差)まで計算した結果であるから、素朴な計算よりやや粗い値になっている。 

 無限級数に展開した計算では、まず句の乗数 (句)^2n の次数が同じものは同じ項に揃うので、それらを集計した値に、各項のもつ係数(級数)を掛けて、その項の和を求めるという計算が能率的で、上の表計算もそのようにしている。つまり5対9枚の〔板〕の縦幅が幾らかは無視して5対9枚を一体のものとして扱っているようなことであるが、これは素朴な計算では出来ないことである。(もっともその代償に、無限の級数に薄切りされたことになるので実際の計算の能率はかえって低下しているかもしれない。)
 帯直弧積術はここで終わらない。ここから級数計算の底力がほんとうに発揮されてゆく。
 これまでは、1対の板の厚さを、弦 AB の 1/5 としていた。これを一般化して、 1/n にする。(この意味は 直径1尺 の設定では理解できないので、直径  、弦  、に従うことにする。) 
 なお、上の計算表は、合縦幅に厚みを掛けて面積を算出するかたちになっている。級数計算に際して、はじめから面積を含むかたちに変更しておく。

. .

 第1項

  第2項

  第3項 

  第4項

  第5項

  第6項

  第7項

.
. . . . . . . . . .
一長 0.141421 0.141421 0.002828 0.000057 0.000001 0.00000002 0.0000000005 0.000000000009 . 
二長 0.282843 0.141421 0.011314 0.000905 0.000072 0.00000579 0.0000004634 0.000000037073 . 
三長 0.424264 0.141421 0.025456 0.004582 0.000825 0.00014846 0.0000267225 0.000004810055 .. 
四長 0.565685 0.141421 0.045255 0.014482 0.004634 0.00148291 0.0004745313 0.000151850025 . 
五長 0.707107 0.141421 0.070711 0.035355 0.017678 0.00883883 0.0044194174 0.002209708691 . 
. . .  sum  sum  sum  sum  sum  sum . 
. . . 0.155563 0.055381 0.023210 0.01047602 0.0049211351 0.002366405853  .
. .   係数 * * * * * * . 
. . . 0.500000 0.125000 0.062500 0.03906250 0.0273437500 0.020507812500 . 
. .  sum = = = = = =  sum
. .  0.707107 0.077782 0.006923 0.001451 0.00040922 0.0001345623 0.000048529808 0.086747262463
. .  . . . . . . . .
. .   第1項  第2〜7項   残り . . . . .
. . 0.707107 0.086747 0.620360 板9枚の面積 . . . .

 第1項の和は (*n)*(/n)=*    (直径  、弦  、)
 第2項の和は      
        {*(/n)^2/()^2}*{(1)^2+(2)^2+・・・+(n)^2}*(/n)
        ={()^3/}*{(1)^2+(2)^2+・・・+(n)^2}/(n)^3
 第3項の和は
        {*(/n)^4/()^4}*{(1)^4+(2)^4+・・・+(n)^4}
*(/n)
        ={()^5/()^3}*{(1)^4+(2)^4+・・・+(n)^4}/(n)^5

第4項以下は省略するが、最後 n項の和は、

       {*(/n)^2n/()^2n}*{(1)^2n+(2)^2n+・・・+(n)^2n}*(/n)
       ={()^(2n+1)/()^(2n-1)}*{(1)^2n+(2)^2n+・・・+(n)^2n}/(n)^(n+1)

ここで、d=1、a=√(2)/2、を再度代入する。
(このところで、=1、=1、を代入すると、「安島直円が示した、π の無限級数による表示」になる。)

第1項の和は  √(2)/2
第2項の和は      
          {√(2)/4} *{(1)^2+(2)^2+・・・+(n)^2}/(n)^3      
第3項の和は
          {
√(2)/8} *{(1)^4+(2)^4+・・・+(n)^4}/(n)^5
最後 n項の和は

             {√(2)/2}^(2n+1) *{(1)^2n+(2)^2n+・・・+(n)^2n}/(n)^(n+1)

いま、各項(の和)の後半は、1からn個までq乗した数の和をn^(q+1)で割るかたちで表されている。そこで、(カンナで薄い板を削り取るような)無限大のn個を考えると、

{(1)^q+(2)^q+・・・+(n)^q}/(n)^(q+1)=1/(q+1)       q=1、2、3、・・・

という結果になってあらわれる。そこで各項(の和)はつぎのような値になっている。

第1項の和は  √(2)/2    
第2項の和は  {√(2)/4}*(1/3) = (1/6) * 
√(2)/2         
第3項の和は  {√(2)/8}*(1/5) = (1/20) * 
√(2)/2
第4項の和は  {√(2)/16}*(1/7) = (1/56) * 
√(2)/2
第5項の和は  {√(2)/32}*(1/9) = (1/144) * 
√(2)/2
第6項の和は  {√(2)/64}*(1/11) = (1/352) * 
√(2)/2
第7項の和は  {√(2)/128}*(1/13) = (1/832) * √(2)/2

最後 無限大n個の和は 1/{(2)^n*(2n+1)} * {√(2)/2} となるようだ。
 次の計算表は、第7項までの結果を用いて計算している。

. .

 第1項

  第2項

  第3項 

  第4項

  第5項

  第6項

  第7項

.

 股

 句

.

.

.

.

.

.

.

.

1.0〜 0〜

0.707107

0.117851

0.035355

0.012627

0.004910

0.002009

0.000850

. 

   √(2)/2    √(2)/2

 .

*

*

*

*

*

*

 .

.

.

.

0.500000
0.125000
0.062500

0.039063

0.027344

0.020508

 係数

.

.

.

=

=

=

=

=

=

sum

.

. 

.

0.058926

0.004419

0.000789

0.000192

0.000055

0.000017

0.064398

.

 .

 第1項

 第2〜7項

 残り

.

.

.

.

.

.

.

0.707107

0.064398

0.642708

帯直弧積

.

.

.

.

.

.

2*帯直弧

 直の面積

 残り =

円の面積

.

.

.

.

.

.

1.285417

0.5

0.785417

(=pi/4)

. 

.

.

.

.

.

.

.

.

0.785398

. 

.

.

.

計算結果として、「残り 0.642708 」が示された。第7項で打ち切りの計算結果であるから、若干多めなわけである。冒頭で述べたように、この帯直弧積を2倍して、直の1個ぶんを引くと、円の面積が求められる。この計算をした結果 0.785417 示された。
 ところで、=1、=1、を代入した場合、「安島直円が示した、π の無限級数による表示」になってくる。

  π/4=1−(1/2)・(1/3)−{1/(2・4)}・(1/5)−{(1・3)/(2・4・6)}・(1/7)
      −{(1・3・5)/(2・4・6・8)}・(1/9)−{(1・3・5・・・〔2n−3〕)/(2・4・6・8・・・〔2n〕)}・(1/〔2n−1〕−・・・・・

π/4 は、直径1の円の面積を四辺各1の正方形の面積で割った値に当たる。
この級数式も表計算してみた。

.

.

 第1項

  第2項

  第3項 

  第4項

  第5項

  第6項

  第7項

.

 股

 句

.

.

.

.

.

.

.

.

 1.0 〜 0

 0 〜 1.0

1.000000

0.333333

0.200000

0.142857

0.111111

0.090909

0.076923

. 

 .      

 .    

. 

*

*

*

*

*

*

. 

.

.

.

0.500000

0.125000

0.062500

0.039063

0.027344

0.020508

 係数

.

.

.

=

=

=

=

=

=

sum

.

. 

.

0.166667

0.025000

0.008929

0.004340

0.002486

0.001578

0.208999

.

 .

 第1項

第2〜7項

 円の面積

.

.

.

.

.

.

.

1.000000

0.208999

0.791001

(=pi/4)

.

.

.

.

.

.

.

.

0.785398

. 

.

.

.

この表では、円の面積 0.791001 という結果が直ちに示される。それでも、前の表は 0.785417 という結果を示している。 (=pi/4) 0.785398・・・ に向かって、この計算の速度が遅いように見えるが、決してそんなことはないと思う。前の級数計算が(全体では) √(2)−(1/2)=0.914213 からスタートしているのに対して、この級数計算は 1 からのスタートである。第8項以下を計算すると、じきに追いつくと思う。

弧の長さを定める

 安島直圓の帯直弧積術は弦と弧の関係を一般的に扱っているので、直径と半円周という円においても通用する。ここまで勉強したおかげで、この理屈がやっと呑み込めたわけである。私の帯直弧積を2倍して云々は笑い草になってしまったが、今なお帯直弧積と円積との関係のごく一部分をなしているのは確かである。融通無碍・天衣無縫の理論を積極的に学ぶ動機になった。それだけでも有難い。

 

 

 ところで、(弦に対する)弧の長さの式を定めるのが直圓の最終的課題であった。
 右図で説明するが、帯直弧の内、灰色の部分を除けて、蝶の羽根のような2色の面積を求める。直圓は、灰色の部分の面積も無限級数の式で表して、直帯弧積の無限級数式から差し引かれるかたちにしている。
 この面積の2倍を直径で割ると、弧の長さが得られる。

 経過ははぶいて、結論の式のみを写しておく。

 

          (直径  、弦  、)

AB

+(1/6)・()^3/()^2+(3/40)・()^5/()^4+(5/112)・()^7/()^6+(35/1152)・()^9/()^8
+・・・・・

まとめ

  直帯弧積術は和算における弓形(弧)の研究の中から生まれた。

この事実を踏まえて、素人考えをさらに深めよう。

  劉徽や祖冲之が円周率を追求したために、ひとつの円は無数の弧に分解されてしまったが、
  直帯弧積術は、遺された破片を丁寧に拾い集めてひとつの円を再び甦らせた。

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