学校図書館の可能性を拓く 五十嵐絹子さん講演会in鹿児島 2008年 2月 24日(日) 10:00〜12:00 鹿児島市立図書館 |
鹿児島の学校図書館を考える会と子どもの本かごしまとの共催で、五十嵐絹子さんの講演会
を開催いたしました。五十嵐さんは、2003年度学校図書館大賞に輝いた鶴岡市立朝陽第一小
学校(山形県)の司書として、学校図書館活用教育の中心的役割を果たしてこられました。 同
校に着任した時、子どもたちに「図書館を本のレストランに」と約束し、児童ひとりあたり年間149
冊もの貸出をする図書館をつくりあげました。図書館便りは「子ども」「教師」「地域」向けの3種類
を発行、授業に使用する情報ファイルは193タイトル。必要な書類は外国の大使館までも電話し
て取り寄せ、司書教諭や教職員、47名のボランティアと連携・協働して、学校図書館の可能性を
切り開いてこられました。
著書 「図書館をつくる教育を変える 鶴岡市立朝陽第一小学校の図書館活用教育」
(全国学校図書館協議会 2004)
「夢を追い続けた学校司書の四十年 図書館活用教育の可能性にいどむ」
(国土社 2006)
「図書館へ行こう 図書館クイズ」 (国土社 2007)
ビデオ 「図書館を生かす 学校は変わる 山形・鶴岡市立朝陽第一小学校」
(紀伊國屋書店 2004)
*講演会に参加した方々から、熱い思いを寄稿していただきました。
私は、昨年(平成19年)3月に、9年間勤務した学校図書館を退職し、現在、公共図書館で働いています。学 校図書館に勤務していた頃、五十嵐先生の実践の様子を本やビデオで拝見し、とても感動し、驚きだったのを 今でもよく覚えています。ただ本の貸出、返却を行うのではなく、調べ学習のサポートをしたり、職員用、児童用 の図書館だよりを作成したりと、当時の私にとっては驚きでした。学校図書館の司書ってここまでやるのか・・・ 司書ってここまでやっていいんだ・・・まさに「目からうろこ・・・」でした。 今回の講演の内容は、五十嵐先生の実体験、実践などをたくさんお話して下さり、学校図書館の司書をしてい た頃の自分の体験と重なる部分もあり、2時間ほどの講演はあっという間に終わってしまいました。 特に印象に残ったのは、調べ学習の取り組みでした。教科に関するブックリストの作成、不足資料の取り寄 せ、学校図書館が学習センター、情報センターとしての役割を果たしているのがよくわかりました。私は学校図 書館司書として調べ学習を実践することはないかもしれませんが、学校図書館だけではサポートできない資料 を公共図書館がどのようにサポートしていくか、公共図書館として今後学校図書館の司書の先生方とどのように 連携を計っていけばよいのか、と考えるよい機会になりました。自分たちのできることから始めたいと思います。 講演の最後でおっしゃった言葉「本の番人にならないで・・・」、とても心に響きました。これは、学校図書館、 公共図書館も同じだと思います。本と人とを結ぶために打って出る司書を目指し、これからも前に進んでいこうと 思います。 今回の講演はとても勉強になりました。本当にありがとうございました。 ( A.H さん) |
司書の仕事を始めて2年が経ちました。現在、小学校2校と中学校1校の3校を担当し、毎日日替わり勤務を しています。各学校それぞれに特徴があり、読書に関しての考え方や、取り組み方もまちまちです。3校担当を 言い訳にしたくはないですが、自分の中のやりたいことと、現実とのギャップにジレンマを感じ、歯がゆい思いをし ていた時に、今回の五十嵐絹子先生の講演会を聴講する機会に恵まれました。 お話をうかがい、思い通りにならないからこそのやりがい、発想を転換してマイナスから始める面白さに気づ かされましたし、何よりも、今までの私は図書館で「待ち」の姿勢で仕事をしていたのだと反省しました。五十嵐 先生の「図書館スタッフへの信頼度と図書館活用は比例する」の言葉には耳が痛かったですが、なにより心に ズーンと響きました。翌日の話ですが、研修職員が今年度の読書活動についての話し合いでした。私は、自分の 反省はもちろん、今回の講演会の話を先生方に熱く語り、そして、ひとり落ち込んでしまいました。そんな中で先 生方からは「先生はまだ司書になって2年でしょう?司書経験40年のベテラン先生の話を聞けるなんて幸せよ。」 と言われました。本当にそうだと思います。図書館づくり・資料の充実・読書力をつける取り組み・不読児童への働 きかけ・先生方との連携・情報発信・情報収集・地域、保護者とのかかわり・・・どれをとっても、目からうろこがポロ ポロ落ちました。 これからは、できるできないで悩んでいないで、「泣こかい 飛ぼかい 泣こよか ひっ飛べ!!」の精神で、何事 にも挑戦していこうと思います。 今回、このような機会に恵まれてとても感謝しています。ありがとうございました。 ( M.I さん) |
子どもたちの読書活動を推進する中で、「本」「読書」「図書館」への思いが強くなればなるほど、周囲との温 度差を感じ、やがてはそれが積み重なってやり場のない憤りとして胸にしまい込むのでした。それでも、学校図書 館へ来てくれる子どもたちの笑顔に励まされたり、活動に参加した子どもたちや保護者の喜びの声に支えられた りして、子どもたちのために今の私にできることを精一杯頑張っていこうと思いなおす日々でした。 そんな折、五十嵐絹子先生の講演会が鹿児島市で開催されることを知り、先生のご活躍は本を通して存じ上 げておりましたので、ぜひ、参加したいと思いました。臨時職員という不安定な身分や周囲との温度差から生じる 葛藤を抱き、学校教育において図書館活用の推進方法を模索していた私は、先生の講演を直にお聞きできるのは 千載一遇のチャンスであると思いました。学びたい気持ちいっぱいで出かけたのです。 講演会はまさに感動の連続でした。次々と紹介される具体的な取組、豊富なアイデアと周到な計画、実行力に、 私は目からウロコが落ちる思いでした。こつこつと調べ、まとめられた資料、対象読者別に発行されている図書館 だより、子どもたちの興味・関心を高める図書クイズなど、先生のご努力に深く感銘いたしました。あらゆるデータ を集め、緻密な分析を行い、学校教育に貢献されている取組は説得力があり、学校図書館、学校司書の可能性は 着眼点によってこれほどまでに広がり深まるものだと思い知らされました。 学校図書館活用教育に朝陽第一小学校あげて取り組まれたことは、五十嵐先生と他の教職員との信頼関係の 深さが伺えます。五十嵐先生の熱意とお人柄が、周囲の理解や協力を得られて大きな力へと結集されたことを感 じました。同じ学校司書の立場からのお話、に私は幾度も胸のすく思いがしました。学校現場は教育課程を実施す る上で先生方が中心です。しかし、読書指導においては個人差を感じることが多いのです。五十嵐先生のように、 全てを担任を通して子どもへ伝えてもらうことで、司書と担任のコミュニケーションが図れます。このことは私も心掛 けていることですが、五十嵐先生の謙虚な姿勢に私もそのようになりたいと思いました。改めて「協働の精神」の大 切さを感じました。 学校教育においての学校図書館は、子どもたちの授業に役立つ図書館であることが、より活用される必須条件 であると私は思います。毎日の授業を実践されている先生方に「学校図書館は授業に役立つ、活用できるところ だ。調べ学習も子どもたちがとても楽しそうに興味を持って取り組んでいる」と思ってもらえることが活用の源にな ります。五十嵐先生がおっしゃるように学校図書館はまさに学びの宝庫です。そこにいる司書によって学校図書館 に命が吹き込まれ、子どもとともに生きる図書館へ変わることがよく分かりました。参考にさせていただき、私も読 書・学習センターとしての機能を果たせる図書館作りを目指したいと思います。 また、DVDを見ているうちに、私は涙があふれてきました。五十嵐先生が図書室へ来ない子どもへお手紙を届 けに教室まで行かれる場面です。お手紙を受け取った子どもが少し照れながら喜んでいる顔にはぐっときました。 先生の細やかで深い愛情をもらった子どもは、きっと大人になってもそのことをずっと忘れないでいることでしょう。 そんな思いを馳せて聞いていると、いつしか、私の心に潜んでいたもやもやした思いは消えていたのです。 「そうなんだ。私は子どもたちに本の素晴らしさを伝える学校司書補なのだ」 五十嵐先生のご苦労やご努力の足元にも及ばない私が、今まで何を偉そうなことを思っていたんだろうと恥ずか しくなりました。先生が、子どもたちや学校図書館に注がれている大きな愛情に比べて、報いを求めてばかりいた 自分に気づき、今後改めていかねばと心が洗われる思いでした。子どもたちのために自分ができる最善のことを やっていこうと思いました。五十嵐先生が四十年間変わらぬ思いを抱き続けて歩まれてこられたことを思うと、本 当に「すごい」以外の言葉はみつかりません。 また、五十嵐先生の学校図書館、読書に対する確固たる信念にも共感しました。読書で救われた小学生時代 のお話に、涙がこぼれてきました。私も大人になってから同じような経験があります。人間関係に悩み、傷ついた 心を引きずり、図書館へ通い本を読むことで、この苦しみ、辛い思いは私一人ではないんだと知り、救われました。 読書は生きる力を与えてくれます。生きる希望をもたらしてくれます。広い世界を開く扉です。私も経験しているか らこそ、子どもたちに読書の素晴らしさを知ってほしいと願ってやまないのです。 五十嵐先生に共感したことがもうひとつあります。それは、 「学校司書の仕事がおもしろくてたまらない」ということです。私もおもしろくてたまらない。とにかく楽しいのです。 学校司書は、人と本をつなぐ、人と人をつなぐネットワークの拠点となって、読書環境を豊かに創るコーディネータ ー的役割を担う存在であると私も思います。まさにクリエイティブな仕事です。全てが子どもたちの笑顔に繋がって いくことが最大の喜びです。 今回の五十嵐先生のご講演から、大きな道標を得、希望と勇気、元気をいただきました。私の住む地域でもさま ざまな課題はありますが、子どもたちに本を手渡すために、愛情をいっぱい注ぎたい、そのためにも資質向上を怠 らず、学び深めて、実行できる者でありたい、そして、五十嵐先生の姿を目標に、私も夢を抱き、実践を続けていき たいと思います。学校図書館の可能性を広げるために、倦まず、弛まず、実践していこうと、気持ち新たに帰路に つきました。遠方ゆえに、鹿児島市まで出かけるには厳しい面が多々ありますが、思い切って参加して本当によか ったと思います。もっともっとお話をお伺いしたいです。また、ぜひ、このような機会を設けていただきたいと思いま す。 最後になりましたが、今回の講演会を鹿児島市で開催して下さいました種村エイ子先生はじめ、運営された皆様 に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。 ( K.I さん) |
*代表 種村エイ子のブログにも関連記事が掲載されています。あわせてご覧下さい。
http://inochinotabi.jugem.jp/?month=200803