<第3回 アニマシオンで遊ぼう!



セミナーA  「人権を考えるアニマシオン」    (2007年 9月23日 10:00〜12:00)

            講師 : 笠井英彦さん
          

     ねらい : 「人権」という重く硬いイメージのテーマについて、絵本を使った作戦を用いて、ほのぼのと楽しく
            学ぶ。
 
     テキスト : 「人権の絵本」 全6巻 ・ 大月書店
 
                主に第1巻「自分を大切に」と第2巻「ちがいを豊さに」を使用。

     参考図書 : 「憲法の力」 伊藤 真 ・集英社
              「オール1の落ちこぼれ、教師になる」 宮本延春 ・角川書店
              「ホームレス中学生」 田村 裕 ・ワニブックス

                                                                            
   人権は、ヒトのケンリです。このケンリという言葉は、
   江戸末期に入ってきた英語 “right” を訳したものです
   が、初めから『権利』だったわけではありません。実は、
   『権理』でした。つまり、損得の『利』ではなく、筋の通っ
   た『理』だったんです。

   笠井先生の発言に、“アニマ”はいきなり活性化。

   「その権利について書かれているのが日本国憲法です。
   3つの柱は、『国民主権』 『基本的人権の尊重』 『平和
   主義』。人はみな同じ、人はみな違う。個の尊重こそが
   人権の内容なんです。」



 ここで、テキスト登場。
「そのまま読み聞かせしてももちろんいいですが・・・」と、前置きして取り出したのは、本物のりんご。そのりんごを
片手に、第2巻の “同じりんごを見ても”の文章を読み、「これだけでも感じ方が違います。」

“違う立場にたってみる” の文章は、間違い探し“ダウトを探せ”で。誰もが知っている昔話「桃太郎」がベースの
文章を、ところどころ変えて読みます。
「同じ材料で“タイトルづけ”もおもしろいですよ。」 学ぶことと楽しいことは両立できるんだ、と納得です。

「・・・と、ここまではウォーミング・アップ。 作戦“大切なもののちがい”」
10項目ある “大切なもの” の中から自分たちにとって大切なものを3項目厳選し、選んだ理由を含めて発表し
合います。共感したり、違いに驚いたりといった体験を通して、ありきたりな自己紹介よりも他者理解が無理なく
進む試みで、場の空気が和みます。「新学期まずこれをやると、ないとはいいませんが、いじめが起きにくくなり
ます。」確かに・・・。

「では、バングラデシュの子どもたちは、どの3つを選んだでしょうか」
笠井先生が探すのに苦労された映像資料を視聴します。世界一貧しい国の悲惨な状況に、参加者の表情も曇り
がち。
「日本の子どもたちの目を開かせてやらなければなりません。・・・この世界と、ここに生きる人々と、自分がつなが
っていることが見えていない。関係あるのに知らずにいる。・・・視野を広げ、思いを馳せ、自分の人生を考えるきっ
かけにしてほしいんです。」
笠井先生の熱い思いが伝わり、大人としての責任を痛感しました。


 気分を変えて、今度は“ないものねだり(?)オークション”
笠井先生が実際、道徳の研究授業で使われた手法です。金銭や物品は言うに及ばず、さまざまな能力、地位、
名誉など、有形無形の品物が書かれた“ちがいを意識するカード”が提示され、手持ちのアニマシオン銀行券で
競り落とすゲーム。指導案段階では喧々囂々の論議を呼んだという、いわくつきの自信作(?)です。

参加者の入札が全くなかった物件は、ゲームの才能(要らない)、首相の座(しんどそう)、親友(お金で買うもの?)、
親友を作る能力(作為的!)、など。逆に、有り金全てはたいても・・・は、健康、優しい心、金銭的豊かさ、美貌、
すぐに立ち直る能力、世界平和、安全な将来、スポーツ万能の能力などで、手に入れたい理由も人それぞれ。
人との違いはもちろんですが、自分自身が何に価値を見い出しているか、自分の中での優先順位はどうなっている
か、自分自身の見直しに一役も二役もかってくれる意義のあるオークションでした。



                     


いつの間にか、「人権」を学んでいるという強張った空気は会場から消え、初対面の参加者同士が笑顔を交し合う
柔らかな雰囲気に包まれていました。発想や視点を変え、導き方を工夫するアニマシオンの手法。もちろん、アニメ
ーターの力量に依るところが大きいと思いますが、理屈というより、心に働きかけることが重要なのでしょうね。心躍
る体験によって、学びが間違いなく楽しいものになることを実感できた貴重な時間でした。

                                                          (N・Tさん)