十五夜お月さん作り

十五夜お月さん作りビデオ上映 - MediaPlayer

十五夜お月さん作りビデオ上映 - YouTube 十五夜お月さん作りビデオ上映 - MediaPlayer

「十五夜お月さん作り」基礎データ

上之坊の十五夜では、綱引きに続き、十五夜お月さん作りという習俗が見られます。綱引きは、二才組と子供組みが、坂道の上下に分かれて引き合います。お月様作りは、十五夜綱の材料となった小綱をつなぎ合わせて輪を作り月を描きます。

「十五夜お月さん作り」写真と解説

1.十五夜綱引きにおける「お月さん作り」の位置づけ

薩摩半島の旧暦八月十五夜行事は、綱引きを中心に行われる。その構造は「材料集め」→「綱作り」→「綱引き」→「綱の再利用(相撲)と綱流し」からなる。

十五夜綱引の構造

このうち「お月さん作り」は、十五夜綱引きの付随習俗事例群の一つ。十五夜の大綱引きに続き、綱の材料となった小綱をつなぎ合わせて「お月さんの輪」を描くという習俗。

2.上之坊の十五夜綱引き・十五夜お月さん作り

上之坊の十五夜綱引きでは、二才組と、集落民を含めた子供組みとが、坂道の上下に分かれて引き合う。綱は、長さ50メートルにもなる。茅でできており、ツナネリ(綱綯い)は前日に行われる。

(1)十五夜綱引き(公民館前の坂道)

  1. 上之坊十五夜の二才衆役員による口説き歌
  2. 二才組の子供組への走り込み(飛び込み)
  3. 二才組対子供組の綱引き
  4. 子供組の綱切り・綱隠し
  5. 二才組の綱探し・綱つなげ(綱上げ)。
    (1〜5を3回繰り返し)

まず役員が十五夜唄「お久米口説き」を歌いあげる。威勢の良い大人の口説き歌に、二才衆(ニセ。青年)が手をつないで、相の手を入れる。二才の衣装は、シベ笠に桃色の手ぬぐいをネクタイ風に巻いている。その歌い終わりを合図に、坂の下側にいる二才が、子供組のいる坂の上部に駆け上がる。これは「跳ぶ」と呼ぶ。子供達は口説きを歌う二才の前で、今か今かと待ち構え、二才が「跳び」出すと、一目散に逃げる。

綱引きは、公民館下の下り坂の道路で行わる。細い路地に長々と伸ばされた綱を、浜側(坂の低いほう)に二才、山側に子供や一般集落民が陣取る。

綱引きの後、綱は子供組側(山側)の先端が切られる。綱が切れるぐらい引き合うという意味だともいう。切られた綱は、2メートルほどの長さ。これを子供たちが隠す(隠す場所は特に決まっていない)。二才衆は二組に分かれて、隠された綱を探し出す。見つけられないと面目が立たないという。綱が見つかると、二才は腰を低くして口説きを歌いながら、浜側の自分たちの場所までゆっくりと綱を下ろす。そして綱をつなぎ合わせて再び引きあう。

一連の動作を三度繰り返す。

飛び込み綱引き切られた十五夜綱見つけた綱を引き上げる二才衆

(2)十五夜お月様作り(公民館の前庭)

  1. 二才が公民館に行列を組んで入場
  2. 手をつなぎ回転する。
  3. 途中で役員から小綱が渡される。
  4. 輪にする。
    (1〜4を7回繰り返し)

綱引きが終わると、公民館の前庭で「お月さん作り」をする。入場の動作も数回繰り返す。

お月様の輪作り十五夜綱の材料となったロープ状の細く短い綱(コマイケ - 小さく巻いたもの)をつなぎ合わせて、お月様に模した輪を作っていく。コマイケは2メートルほどの短い綱。掛け声のもと、二才が手をつないで回転し、輪を作っていく。掛け声は、次のとおりで、威勢よく回る。

「ヨイヨイヨイヤナ、ハーレヤナッ、ハーレヤナッ、ヤットコセー」

これも数回繰り返して、ようやくお月様が出来あがる。綱をつなぎ合わせて輪を作るとともに、上から見ると、人間同士の輪にもなっている。かつては深夜まで続く習俗で、真上にお月様が来た時に出来上がったという。

3.上之坊十五夜お月さん作りの特徴と意義

出来上がった「お月さん」既存の研究では、綱を切って繋ぎ直して又引きあうことは、脱皮という「死と再生」を繰り返す蛇をモチーフに、不老長寿を願うものと言う。また、お月さまの輪を描くことは、月が夜露をもたらすことから、雨乞い、引いては豊作祈願の願いが込められていると解されている。(下野敏見『南九州の伝統文化1 祭礼と芸能、歴史』295頁ほか)

この習俗は、古風な綱引きの中に、何か新鮮なものを感じる。二才の首にネクタイ風の手ぬぐいが巻かれている点、被り物のシベ笠など、異人を思わせる。知覧のオランダ踊りではないが、海に開けた坊津で、異人との接点を、このように表現したのではないかとも考えさせられた。

また、八朔行事が盛んなこと、十五夜口説き歌の伝承など、三島村や屋久島文化との交流も、今後は視点に入れて坊津の伝統文化を考え直す必要があるとも思える。

上之坊で調査中、隣の集落からも口説きの歌声が聞えた。上之坊・鳥越・泊といった個性豊かな十五夜行事とともに、坊津各地で今も十五夜行事は続いている。

→詳しい解説は、「薩摩半島における十五夜行事の構造

「坊津の十五夜」記録映像・記録画像

十五夜火とぼし
十五夜火とぼし

上之坊:材料集め習俗
YoutubeWMP

十五夜茅カル
茅カル(茅背負い)

平原:材料集め習俗
YoutubeWMP

十五夜茅被り
十五夜茅被り

平原:材料集め習俗
YoutubeWMP

十五夜テツナッゴ・ドントセ
手つなっご・ドントセ

鳥越:材料集め習俗
アルバム

十五夜綱練り
十五夜綱練り

久志:綱作り習俗
アルバム

十五夜綱練り
十五夜綱練り

上之坊:綱作り習俗
YoutubeWMP

十五夜お月様作り
十五夜お月様作り

上之坊:綱引き習俗
YoutubeWMP

泊十五夜踊り
泊十五夜踊り

泊:綱引き・綱流し
YoutubeWMP

十五夜シベ踊り
十五夜シベ踊り

鳥越:綱引き付随習俗
YoutubeWMP

坊津十五夜一覧:坊津の十五夜
記録映像総集編:薩摩半島の十五夜行事


〔実地調査〕
2006.10.6・2012.9.30(旧8月15日)筆者調査。綱引きは午後7時から。「お月さまの輪作り」は、許可を得て公民館の屋上から撮影した。

〔参考文献〕
拙著「薩摩半島における十五夜行事の構造」(『南九州市薩南文化』第3号、2011年、南九州市立図書館編・発行)に記載。

鹿児島祭りの森