串木野市羽島の採集漁法具 - 青海苔採りの道具「オサカキッガラ」に関するレポート | 鹿児島の民俗 - 薩摩民俗HOME

串木野市羽島の採集漁法具

―薩摩半島串木野市羽島海士泊のオサカキッガラ―

地図●串木野市羽島位置図 羽島は中心となる浜村落の東西に磯場があり,オサノリ(青海苔),ブト(テングサ),ヒジキなどが採集されている。これらはおもに農村村落である,海土泊および光瀬の女性によって行われ,ブトクサを除いて農業の余暇的,そして自家消費的な稼業となっている。

 このうちオサノリ採集にはオサカキッガラと呼ばれるツキヒ貝の貝殻がもちいられ,わざわざ串木野島平の浜まで拾いに行ったという。実測したものは直径10.3センチメートルの白い貝殻で,他に赤いものも用いるという。オサノリの採集方法は,まず潮が引いたときに磯などでオサカキッガラをもちいて両手をつかって採り(写真),潮で洗う。家に帰りウショケ(大桶/60〜90センチメートル)の中に雨水を入れ,そこで4,5回洗う。その後,ケゴバラ(蚕笊)の上で2,3日干す。自家消費用のものはそのまま食用としたが,戦後になって箸を糸でくくり作った型をはめて乾燥させ,最後に竹で余分な海苔を削って寿司用の海苔の一枚分の大きさに切って製品化させるようになった。オサノリを採る場所は,海士泊から白浜にかけての海村沿岸であるが,40年代から浜の波止場西で漁協が養殖を行うようになった。そこを利用する場合には,入漁料を払わなければならない。

写真●オサカキッガラ またブトは手で採り,自作のシュロ製もしくは藁製のコシカガイに入れ持ち帰って,笊のうえで天日に干すとすぐに乾く。自家消費用のみである。ヒジキは鎌で採り,1〜2日庭やセメントの上で乾かす。昔は自分が食べる分だけ採っていたが,今は漁協が買い上げている。ブトクサ,ヒジキとも甑島側の羽島崎から土川村落にかけてのウシトンハマ(後ろの浜)およびミミゼ(耳瀬)の海岸で採集されている。また光瀬の女性などは,潜水漁業(男性のみ)に行く船に便乗し,沖の島やウシロノハマまで出向くものもあった。潜水漁業によって男性が採ったブトクサも,女性の沿岸採取物ともども阿久根の商人の請け負いという形態で経済的に行われていた。,商人の介在では戦後マクイ(カイジン草)を採って,買い付けにきた市来の商人に売っていたという伝承もある。

 オサカキッガラの代用として,つい最近からラーメン用のレンゲを用いるようになったそうである。


●調査日 1991.8.27,1992.2.9
●調査地 鹿児島県串木野市大字羽島海士泊集落(くしきのし・はしま・あまどまり)
●伝承者
N.O.さん M39.3.21生まれ・F  I.N.さん M37.3.25生まれ・F
S.M.さん M39.12.18生まれ・F  G.N.さん M41.7.28生まれ・F
M.U.さん M39.2.11生まれ・F
●初出 1992,『鹿児島民具』10号,鹿児島民具学会,52−53頁。

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