えびすさんは軽トラでご神幸 - 阿久根市の十日エビス祭り |鹿児島の民俗 - 薩摩民俗HOME

えびすさんは軽トラでご神幸

―薩摩半島阿久根市の十日エビス祭り―

●阿久根市高之口の十日エビス祭り

地図●鹿児島県阿久根市 1998年1月10日雨。午前10時30分に伊作駅(薩摩半島吹上町)で小川秀直先生と待ち合わせ,私の自動車で阿久根(薩摩半島あくね市)に。12時過に阿久根市大川を越えたところの海の見えるレストランで昼食。1時前に高之口(たかのくち)公民館に着いた。

 公民館の庭の両側に赤い恵比須大明神ののぼり。公民館では役員さん方が準備中で,エビスは壇上に祭られている。エビス像は陶器製で高さ40センチメートル。となりの大黒とセット。塗料で北薩の「田の神」状に鮮やかに化粧されている。前には賽銭箱,とっくりとオチョコ2組,お供えには発泡スチロールの皿にタイ・エビ・ウニ・ワカメ・ヒジキ・アワビが盛られている。

 2時から祭りが始まるというので,その前にエビスの祠へ。かつて島であったであろうエビスのある場所は,現在「構内スロー」の文字のある堤防でつながったところ。ここにも赤いのぼりがかけられている。コンクリート製の祠には何もない。普段は先程見たエビスが祭られているのだから,ないのも当然。お祝いの焼酎を求めて同市内の潟地区まで行った。

写真●高之口のエビス像 戻ると,ほどなく開会。後ろから見て左側に役員8人。中に漁協組合員20人。右に来賓10人ほど。この祭りは西目(にしめ)漁協高之口支所のエビス祭り。伝統行事というよりも漁協の仕事始め式という形式ばった感じ。他の支所では有志だけの参加だが,高之口では28世帯全員が参加しているという。会は総代あいさつにつづいて,市長のあいさつ,県議,市議,西目漁協長とつづき,2時25分に組合員の年配者の乾杯で祝宴。災害に明け暮れた平成9年を振り返る市長のあいさつの途中で,地震に見舞われる。川内震度4,阿久根1であった。

 エビスは年末に総代宅に御迎えしておいて,家内で温かい正月を迎えてもらい,今日のお祭りの後,元の祠にお戻りいただく。最近は11日に総代と会計の都合のいい時間に自動車で戻す。今年は11日の9時に戻すということで,翌日その時間に見学に行ったが,悪天候をついてすでに軽トラックで運んだあとだった。少し残念。阿久根まで3時間もかかるのに・・・。やはりエビスの戻った祠はしっくりきている。昔はかついで引き潮に海岸を歩いて戻していたという。そのころは岸壁もなかった。

 高之口はウニ・アワビなどを網で取る漁が中心。阿久根の市場に出す。8月1日の海の日に大量祈願をする。漁がないとき船霊を昔は代えていたが今はしない。

●阿久根市浜町の十日エビス祭り

写真●浜町のエビス像 1998年1月10日 午後3時〜午後21時。高之口を見た後,市街地を回って見た。たくさんの幟がたっている。各町内会でお祭りをしているらしい。浜町(阿久根市はままち)の公民館の入り口は大きなちょうちんがかけられ,他の公民館よりデラックスに見えたので立ち寄る。子供達がたくさん集まって,大人が太鼓をたたいていたが,お菓子を戻って子供達は帰ってしまった。後から聞くと,子供達が歌を歌いながら祭りを触れて回るのだが,雨なので今年は集まりも悪く,取りやめたとのことだった。どうもおもしろそうである。


●調査日 1998.1.11
●調査地 薩摩半島阿久根市高之口・浜町(あくね・たかのくち・はままち)
●未発表資料。Web書き下ろし。

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