12月 内神祭り 加世田市当房のウッガン祭り(内神・氏神)から集落の信仰を考える| 加世田風物詩 < 南さつま半島文化

ウッガンサアへの感謝

―薩摩半島加世田市当房の内神霜月祭り―

 集落を歩いていると,大人の背の高さより少し大きいくらいの木製のほこらを庭先で見かけます。これは,同じ姓の付いた人々が数軒から十数軒でお祭りするウッガンサアという神様です。旧暦11月にはウッガン祭りが行われます。

 万世の当房(とうぼう)にある久多島神社(くたしまじんじゃ)では,12月10日に神祭りがあり,鹿児島の典型的なウッガン祭りの姿を見ることができます。まずびっくりするのは公民館で参拝者に配られる直系8センチのまん丸な赤飯の握り飯です。それを食べ終わると裏山の頂上にある神社へ向けて出発。途中の鳥居では,しめ縄を取替え,神柴を挿します。
 到着すると御神体の石に着せられた白紙を新しいものに着せ替え,赤飯やシトギ(米粉の団子)をお供えします。これは神社の外にも供えます。お箸は神社のそばにある樫の木の枝で作ったものです。
 参拝者が拝殿でお供え物をいただき公民館に戻ると,子供たちがヤツデの葉っぱをもって待っており,残った赤飯などをその中に分けてもらいます。
 この神社は,戦前まで山の麓にある本家に祭られていました。月々のお供えは昔はくじ引きで当番を決めていましたが,今は3組の順番になっています。

 ところで久多島神社は吹上町の永吉(薩摩半島・ふきあげちょう・ながよし)にもあり,3年に1度,久多島(東シナ海に浮かぶ無人島。吹上町から9.5キロ沖)まで神様を運んでお祭りしていました。戦後も長く続きましたが,現在は氏子の高齢化もあって,ここ数回はやっていないそうです。当房でも以前は久多島へお参りしました。また,神祭りのとき,神社のそとにもお供え物をするのは「鳥に食わせるため」と言われますが,久多島に海鳥の多いことと関係しているのでしょうか。

 江戸時代,薩摩藩には集落の中に門(かど)という一族ごとの生産共同体があり,その神様がウッガンサア(内神様)です。当房でも8人の開拓者が御神体だとも言われます。ウッガン祭りは一族の結束と,身近な神様への感謝の意味が込められているようです。

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