集英社文庫
   
    イリュージョン
     リチャード・バック
      村上 龍   訳

      本当に愛するものを見つける方法は? 真の自由を説き、
      複葉機で空と草原を駆けめぐる、おかしな救世主と心優し
      いヒコーキ野郎。次元を超越した不思議な二人の出会いと
      冒険が悲喜劇をひきおこす。世界ははたして幻影にすぎな
      いのか?物質万能の現代文明への皮肉をこめ夢と自由を
      求める若者に贈る現代の英雄伝説。「かもめのジョナサン」
      を凌ぐ会心作。

   

         リチャードは複葉機で旅をしながら、十分間三ドルで空の旅を人々に売るというジプシー
    飛行士をしていた。ある日いつものように愛機フリートで飛行中、偶然に同業者のドナル
    ド・シモダと出会い、こんな会話から、二人の不思議な冒険飛行の旅は始まる・・

      「やあ、君がなぜか寂しそうに見えたんだよ」
      「君だってそう言えばそう見えるぜ」
      「じゃまかな? じゃまなら消えるけど」
      彼は、少し笑って言った。
      「いや、待ってたのさ、君をね」
      それを聞いて僕も微笑を返した。
      「そうかい、遅くなってごめんよ」


       ―文中から―
        「君は自分の好きなイリュージョンを見る、彼らも彼らが好きなものを見る、それが自由って
        ものさ」―
        「俺達がやってるのはゲームだ、俺達は本来愉快に暮らす生き物で、宇宙の川獺さ、地球
        という大きなスクリーンの上の、巨大なイリュージョン、巨大で緻密な幻影の中に生きてる、
        それで自分は犠牲者だと思い悩んだり、怪我をしたり、他人を殺したり、殺されたり、幸運
        に身を震わせ、不運に嘆いたりするんだ」――


    誰かの言葉で、『私達は人生に見たいものを見る』という言葉があったけど
    本当に単純にそういう事で、辛いところに気持ちを向ければ辛いし、楽しいところに気持ちを
    向ければ楽しい、その意識の向け方によって幸か不幸かが決まってしまうような、やっぱり
    自分次第なんだなぁと思う時があります。


       ―たとえ幻であっても
        美しいことに変わりはない―